【TRPG】下天の勇者達【クロスオーバー】

話題

1 :創る名無しに見る名無し:2019/05/04(土) 20:25:36.10 ID:i73bodOw.net
【ストーリー】
魔族が支配する国家[ゲヘナ帝国]
人族が築いた国家[タルタロス王国]
世界有数の力をもつ二国は、信仰する宗教と人種の違いから数十年に渡り戦争を続けていた
両国の力は拮抗しており、一進一退の攻防を繰り広げていたのだが……10年前、タルタロス王国が発見した一つの術式によって、その均衡は打ち崩される

[崩壊聖術 バベル]

空間から魔力を消失させる事であらゆる生命を崩壊へと導く破壊の術式は、タルタロス王国へと圧倒的な勝利を齎した
領土の8割が荒野と化した結果、ゲヘナ帝国は降伏。タルタロス王国は勝利の名の下に魔族を隷属させ、この世の春を謳歌する事となった

けれど、その血に濡れた春は直ぐに終わりを迎える事となる
外敵の襲来――バベルの強大過ぎる破壊の力が世界の境界を歪め、招かれざるモノを呼び込んだのだ

白色の体に、奇妙な模様が描かれた黒い仮面を被った怪物。通称[ナナシ]
ある日、バベルの発動地点から空間を割る様にして現れたこの怪物は、地上に降り立つと同時に無差別の殺戮を開始した
その身体能力は軽く拳を振るうだけで多数の命を刈り取る程に強く、更に恐ろしい事に、ナナシは命を奪った存在を自身と同じナナシの怪物と変貌させる能力も有していた

この事態を前にして、王国や帝国はあらゆる手段を用いてナナシの排除を試みたが――結果は失敗
ナナシにはこの世界の魔術や聖術が一切通じず、増え続ける怪物を前にして人類は打つ手無くその生存領域を減らしていった
そして、人族と魔族が協力し合わなければ生きることすらままならぬ程に人類が衰退した頃
ナナシ対策の研究を行っていた一人の魔術師が、こう提言した

『この世界の者が[ナナシ]を倒せないのであれば、異世界の人間に倒させればいいのではないか』と

妄言としか思えぬ言葉。けれど、追い詰められた人類は狂気的とも思えるその言葉に賭けた――賭けてしまった
遥か昔に存在した[勇者召喚]の術式。それを掘り起し、復元し、改造し、彼等は力持つ異世界人を呼び出す事に成功する

そうして身勝手な期待と絶望的な運命を背負わされ、勇者は――――[あなた]は、終わりゆくこの世界に召喚される。

2 :創る名無しに見る名無し:2019/05/04(土) 20:26:47.44 ID:i73bodOw

【テンプレート】

名前:
種族:
年齢:
性別:
身長:
体重:
性格:
所持品:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

【属性】
真/偽/人

[真]…異世界の勇者本人
[偽]…異世界の勇者の姿と力を手にした現代日本人
[人]…現地人

【所属世界】:[スレッド名+URL]or[オリジナル設定]

参考資料:なな板TRPG広辞苑
ttps://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/56.html

3 :創る名無しに見る名無し:2019/05/04(土) 20:33:55.97 ID:qHuS0V6v

支援

4 :ソロモン :2019/05/04(土) 20:40:35.81 ID:i73bodOw

「主よ、我らの主よ、あなたの名は地にあまねく、いかに尊いことでしょう……」
今、すでに打ち捨てられたとある城の地下室にて、その男は聖書の詩篇を暗誦していた。
男の名はソロモン、年老いた魔法使いである。
魔法の世界で彼の名前を知らないとすれば、よほどの愚か者である。
彼ほど古今の魔法に精通している魔法使いはこの世界に何人もいない。
そして、崩壊聖術バベルを発動させ、タルタロス王国に勝利をもたらした魔法使い達の一人が彼であり、
その結果としてナナシが世界に蔓延る原因を生み出したのも彼なのだ。
ソロモンは精神を集中させ、今贖罪の儀式を行おうとしている。

(贖罪……?)
はたしてそうだろうか?ソロモンは自身の長い白髭を撫でて考える。
(何の関係も無い異世界の者に全てを託すことが……?)
しかし、これは王立魔法協会の決定事項である。
すでに他の魔法使い達もこの儀式を執り行っているはずだ。
異世界から勇者を召喚する儀式を……

ソロモンは床に描かれた魔方陣へと近づき、そして詠唱を始めた。
「われは汝を呼び起こさん!至高の名にかけて!われ汝に命ず!」
「あらゆるものの造り主!その下にあらゆる生が跪く方の名にかけて!万物の主の威光にかけて!」
「いと高き方の姿によって生まれし、わが命に応じよ!」
「神によって生まれ、神の意志をなすわが命に従い、現れよ!」
「いと高き万能の主にかけて!勇者よ!しかるべき姿で現れよ!」
さらにソロモンは聞きなれない呪文を何度か詠唱すると、魔法の大杖でズンと床を突いた。
ソロモンの前にある魔方陣から徐々に光があふれる。
はたしてどんな勇者が召喚されるのであろうか?

5 :ソロモン :2019/05/04(土) 20:41:03.14 ID:i73bodOw

名前: ソロモン
種族:人間
年齢: 88歳
性別: 男
身長: 175cm
体重: 62kg
性格: 厳格
所持品: 魔法使いの大杖
容姿の特徴・風貌: 白いローブに長い白髪と長い白髭
簡単なキャラ解説:
崩壊聖術バベルを発動させた魔法使い達の一人。
回復魔法を始め、古今の魔法を極め尽くしたが、
ナナシに通用しないことを悟り、
今自分の命にかけても異世界から勇者を召喚しようとしている。

【属性】

【所属世界】:オリジナル

6 :創る名無しに見る名無し:2019/05/04(土) 20:48:58.49 ID:q/PrOJ4Y

期待

7 :創る名無しに見る名無し:2019/05/04(土) 20:52:25.08 ID:i73bodOw

避難所はこちらです。よろしくお願いします。
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1556969425/

8 :創る名無しに見る名無し:2019/05/04(土) 21:26:13.81 ID:zoD2y/ky

昔のスレのキャラの名前と姿と能力を借りて参加するってこと?

9 :創る名無しに見る名無し:2019/05/05(日) 04:50:28.71 ID:Kvsv+2vO

面白そうやな
仕事に暇できたらテンプレ考えてみるわ

10 :ノイン :2019/05/06(月) 00:24:50.81 ID:tTlErd/A

ソロモンが呪文の詠唱を終え、この世界に勇者を齎す召喚陣が光輝を増したその時である。
打ち捨てられた城の広大な地下室。その天井の一部が轟音と共に崩壊し、床に墜ちた瓦礫が砂埃を撒き上げた。
天井に穿たれた穴は外光を取り込み、室内に場違いに美しい光の柱を作り出していたが……不意に、その光柱に照らされた瓦礫の中から何かが起き上った。

「……全く、度し難い程に詰んでいるなこの国は」

それは青年であった。
烏の濡れ羽色の黒髪に、鮮血を思わせる紅の瞳。寒気がする程に整った容貌は見る者を厭がおうにも見る者を引きつけ、黒色の生地に銀糸や宝石が縫いこまれた衣裳は、見る者に青年が高貴な生まれの人間である事を思わせる。
青年は片手で口の端に流れる血と服に付いた砂埃を払うと、召喚陣に杖を突き付けたソロモンへとその視線を向けた。

「魔術師ソロモンよ。貴様達の願い通りに時を稼いだが、その様子を見るにどうやらまだ儀式を終えていない様だな」

吐き出した言葉から感情の色を察する事は出来ないが、その瞳には僅かな失望の色が宿っている。
瓦礫から立ち上がり、崩落した天井に空いた穴に視線を移すと、その腰に下げた剣を抜く。

「ナナシの群れ共は直ぐそこまで来ている。危急ゆえ迅速に決断せよ。召喚を諦めて退避するか――――或いは諦めずに死ぬかを」

直後、青年が視線を向けた天井の穴を影が覆い、次いで巨大な白い何かが落ちて来た。
青年に倍する程の白色の巨躯に、不可思議な模様の描かれた黒色の仮面の怪物――――『ナナシ』。
青年は即座に怪物相手に剣を振るい、二度三度と斬撃を刻んでいくが、ナナシは痛みを感じた様子も無く拳を振るう。
空気を震わせる程の剛腕は、直撃すれば青年を血の花へと変えてしまう事だろう。
それを紙一重で回避していく青年であるが、その体裁きは剣に覚えがある事こそ感じさせるものの、剣で生きる戦士のソレではない。
剣を振るい、拳を回避する度に徐々に劣勢へと追い込まれていき……

「ッ!?」

やがて、ナナシの拳が青年を掠めた。
直撃でないにも関わらず、それだけで青年の体は宙を舞い、地下室の壁へと叩きつけられる。
そうして青年を排除したナナシは、その仮面の付いた顔を召喚陣へと向けると緩慢な動作で一歩づつ距離を詰めていく。
此のままではソロモンは犠牲となり、儀式は失敗に終わるだろう

だが、ナナシがあと数歩の距離まで近づいたその瞬間。召喚陣は一際強い輝きを放ち――――

11 :ノイン :2019/05/06(月) 00:25:30.09 ID:tTlErd/A

名前:ノイン
種族:人間
年齢:21歳
性別:男
身長:178cm
体重:68kg
性格:冷静沈着
所持品:魔剣、指輪、皇族の証
容姿の特徴・風貌:真紅の瞳に闇色の髪をした、寒気が奔る程に美しい容貌
簡単なキャラ解説:

この世界とは異なる国における第九王子
勇者召喚の実験段階の儀式で呼び出された数少ない成功例の一人
元の世界に戻る手段を捜している

【属性】真

12 :ノイン :2019/05/06(月) 00:40:12.13 ID:tTlErd/A

【所属世界】
ヘヴィファンタジー:ttps://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/132.html

13 :創る名無しに見る名無し:2019/05/07(火) 12:25:24.94 ID:JZ5u9VY4

そこに紛れ込むウンコ

もれなく現わる!!

14 :創る名無しに見る名無し:2019/05/07(火) 19:43:55.50 ID:jKlqX2fy

ゲテモノってやっぱり
糞のことだったのか
がっかし

15 :橘川 鐘 :2019/05/08(水) 21:27:31.99 ID:/A4fwRrS

名前: 橘川 鐘(きっかわ しょう)/妖精美少女『ベル』
種族: 人間(異能者)
年齢: 45
性別: 基本は男/能力発動時は女
身長: 165〜170ぐらい
体重: メタボ/スリム
性格: 純粋な乙女の心を持ったまま歳をとっておっさんになったオトメン
所持品: 童話『ピーターパン』の本(能力発動の鍵なので常に身に付けている)
容姿の特徴・風貌: メタボのおっさん/妖精美少女
簡単なキャラ解説:
普段はメタボのおっさん。
能力を発動すると二対四枚の翼を持つ妖精美少女『ベル』に変身し、本に出てくる妖精の魔法が使えるようになる。
具体的には飛行能力と、かかると空を飛べるようになる粉を振りまく能力である。
物体にかけた場合は、その物を念動力のように操れる。
人間にかけた場合は、かけられた側が空を飛べると信じる事によって、一定時間空を飛べるようになる。
元いた世界では能力者が集められた隔離都市にて玩具屋の店主をしており、
ひとたび事件が起これば美少女妖精戦士『ベル』となり 街の人々の夢を守るために日夜戦っていた。
街を守ろうとする仲間達と共に、暴力的な手段も厭わず隔離都市解放を目指す過激派勢力と戦いを繰り広げていた最中、気付いたらこの世界に召喚されていた。

【属性】 真

【所属世界】:BOOKS〜童話系異能者TRPG〜ttps://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/712.html

16 :橘川 鐘 :2019/05/08(水) 21:31:29.76 ID:/A4fwRrS

>だが、ナナシがあと数歩の距離まで近づいたその瞬間。召喚陣は一際強い輝きを放ち――――
メ タ ボ の お っ さ ん が 現 れ た。

まず聞こえてきたのは、“もうお終いか””儀式は失敗だ”等の落胆を通り越した絶望の声。
周りを見渡してみると、人間離れしたほどの美形の青年が黒面の異形の怪物に壁に叩きつけられ、
一方では白髪と白髭をたくわえた年配の男性が何らかの儀式をしている真っ最中。
ここはどこ? 私は橘川鐘。またの名を妖精美少女戦士ティンカーベル。
能力者の隔離都市にて過激派と戦いを繰り広げていた最中、眩い光に包まれたかと思うと突然ここにいた。
そうなると、年配の男性が行っているのはいわゆる召喚の儀式、というものだろうか。
異世界に召喚された? 私が? 近頃流行りのラノベじゃあるまいし、いや、まさか、そんなことが……
青年を再起不能と見なしたのであろう怪物は、今度は年配の男性へ向かっていき、その距離はあと数歩まで迫っている。
そのことに気付き、私は我に返った。
考えるのは後、目の前で傷つけられようとしている者を放ってはおけない。
何故なら私は美少女妖精戦士『ティンカー・ベル』なのだから! 私は叫んだ。

「変・身!」

17 :ティンカー・ベル :2019/05/08(水) 21:33:28.35 ID:/A4fwRrS

極めて単純明快なる掛け声とともに、私はメタボのおっさんから二対四枚の翼をもつ妖精美少女へと姿を変え、宙に舞い上がる。
同時に金の粉が舞い、近くにある瓦礫へかかった。

「こっちだ、化け物!」

剣士らしき青年をやすやすと吹っ飛ばした化け物の力は絶大、かなりの強敵だと思われるが、動きが緩慢なのがせめてもの救いだろうか。
まずは大き目の瓦礫を一つぶつけて気を引き、その隙にそこらじゅうの瓦礫に金の粉を散布する。
この粉がかかった物体は、念動力のように自在に操れるようになるのだ。
たとえ小さな破片だろうと、猛スピードでぶつければ弾丸のごとき威力になる。
大小様々な瓦礫を浮遊させ、四方八方から最大射出速度で一斉にぶつけた。

「これで……どうだ!!」

18 :創る名無しに見る名無し:2019/05/09(木) 17:56:25.61 ID:AEUjrsAD

肥満が酷いな
ウンコサドンデス入るかい?

19 : :2019/05/13(月) 04:14:32.29 ID:Xw/hzE4/

終わったはずの物語。
許されなかったはずの救い。
もしも願いが叶うなら。

夢の続きを、少しだけ。

20 : :2019/05/13(月) 04:15:38.14 ID:Xw/hzE4/

……何か夢を見ていた気がする。
というか、意識がふわふわして色々とハッキリしない。

「んー」

ぺち、ぺち、と顔を両手で挟み込むようにはたいてみる。

「痛い」

なるほど、今は夢ではないらしい。
では次。あたしはだーれだ。3文字以内で答えよ。

「……いとり」

……短い。7文字で。

「おおあえ、いとり」

そう。舌が回ってないようにも聞こえるこの名前が、あたしの本名。
性は大饗(おおあえ)、名はいとり。
二つつなげて大饗いとり。
……母さんにつけてもらった、大切な名前。
それを認識した瞬間、視界が一気に開けるのを感じる。

天井の崩れた部分から降り注ぐ光の梯子。
足元で光り輝く複雑な形状の幾何学模様。
中世風の衣装に身を包んだ周囲の人々。
白い巨躯に黒い仮面の謎の怪物。
壁に半分めり込んだ状態の青年。
空を飛ぶ妖精のような姿の少女。

……。

「……夢?」

思わず声に出した私につっこんでくれる人は、残念ながら周囲にはいなかった。

21 :大饗いとり :2019/05/13(月) 04:16:29.67 ID:Xw/hzE4/

ぺちーん(あたしが自分の頬を割と全力で張った音)

「……痛い」

よし、残念ながら夢じゃない。
現実逃避の道を防がれたあたしは、一先ず周囲の状況を再び確認する。

空を飛ぶ妖精のような姿の少女。
周囲の瓦礫がいくつか浮かび上がっているのは、どうやら彼女の仕業のようだ。
魔法少女のようにも見えるけど、魔力は感知できない。うーん?

壁に半分めり込んだ状態の青年。
死んでいると確証はないが、生きている保証もない。
目覚めが悪いので生きていてほしい。でも、生死を確かめる時間があるかどうか。

白い巨躯に黒い仮面の謎の怪物。
こちらも瓦礫に半分埋もれているが、まだ動いている。
埋もれているのは多分空中の少女の仕業だろう。見た感じ悪玉だけど、さて。

中世風の衣装に身を包んだ周囲の人々。
ざわざわしている。というか、大半は恐慌状態に見える。
比較的落ち着いて見える魔法使い風のお爺さんも、割と浮足立っている。

足元で光り輝く複雑な形状の幾何学模様。
いわゆる魔法陣、という奴だろうか。
だとすると、これはひょっとして、アレなのでは?

一先ず、瓦礫を操る少女に任せればあの怪物は足止めできそうだ。
となると、まずは状況把握からするべきか。
あたしは、魔法使い風のお爺さんに話しかける。

「ええと、その……状況を、説明して下さわーっ!?」

叫び声みたいになったのは、お爺さんを驚かせようとしたからではない。
事実、叫び声であり、むしろあたしが驚いていたからだ。

天井の崩れた部分から降り注ぐ光の梯子。
その光を遮るかのように、もう一体、今表れているのと同系の怪物が顔をのぞかせたのである。
幸いというべきか、まだこちらに降りてきてはいないが、それも持って数秒、といったところだろう。

「……あれ、あたしが対処しなきゃなんですか……!?」

……見た目通りの脳筋怪物なら、あたしでも対処できるが、まずここがどこかすら分かっていない状況だ。
できる限り情報は引き出したい……という考えから、あたしはお爺さんに詰め寄っていった。

22 :大饗いとり :2019/05/13(月) 04:17:40.04 ID:Xw/hzE4/

名前:大饗いとり(おおあえ・−)
種族:人間(魔法少女)
年齢:15
性別:女
身長:151cm
体重:45kg
性格:シニカルで嗜虐的。 女性らしさがなくならない程度にはざっくばらん。
所持品:魔法核(魔法少女の魔力の源にして魂。基本的には体内に格納されている)
容姿の特徴・風貌:
 金髪(地毛)にシャギーをかけたショートヘアと、口元に浮かぶ皮肉げな笑みが特徴的な少女。
 衣装は、召喚時点では長袖のTシャツにジーンズ。 発育状況は聞いてはいけない。
 魔法少女に変身すると、金色を基調としたドレスを纏った上に、毛皮のマント、王冠、錫杖を身に着けた、
 戯画化された「王女」とでも言うべき服装をとる。服をまとう彼女の体自体は変化しない。
簡単なキャラ解説:
 日本で有数の名家、大饗家の唯一の後継者として、帝王学を一身に叩き込まれて育った少女。
 金銭的にも愛情的にも何不自由なく育てられた……はずなのだが、その心は満たされないもので満ちていた。
 元の世界は、悪魔との契約で『魔法少女』が生み出され、戦いあっていた現代日本(に近い世界)。
 彼女はその世界で暗躍し、自らの願いをかなえようとしていたが……?

【属性】

【所属世界】:ブラック魔法少女TRPG
ttps://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/248.html
ttps://wikiwiki.jp/blackmagical/

24 :Interlude :2019/05/17(金) 19:12:43.31 ID:dAw/FTdu

【ユースレス・キャスト()】

――――天の裁きが実在するのなら。それはきっと、こんな空から下されるのだろう。

見上げた蒼穹の中に、私は不思議な光景を幻視していた。

「あれって、結界の祠の方向かしら」

臆病な森の精霊が、ざわざわと騒いでいる。
少し遅れて、森に棲む動物達の気配が一斉に動き出した。
呼吸を止めて一秒。濃密な霊気と希薄な霧を含んだ大気を震撼させる轟音。

「もしも幻覚じゃなかったとしたら、ぶっちゃけ、嫌な予感しかしないわね……!」

久し振りの……本当に久しぶりの仕事の予感だ。
風の精霊力を行使して空に舞った。これはチャンスでもある。
払いの渋い神殿の連中に対して、そろそろ私の有用性を分からせてやらないと。

「……この案件が片付いたら、宮廷占術師にでも転職しようかしら」

結果フェイズ―――結界の祠は、きれいさっぱり消え去っていた。
代わりに元・パワースポットに出現した謎のクレーターが私を出迎える。
中心部に先客があった。こうして遭遇するのは初めてだが、此処の神獣だ。
森の守護者が出張って来ている。この事実が示すのは外敵の侵入に他ならない。
神獣は、全身甲冑(フルプレート)らしき人型を美味しくなさそうに”がぶがぶ”している。

「まさか人族の侵攻? どうなってんのよ休戦協定はっ!」

遠目からは判らなかったが、人と魔どちらの文明の産物とも付かない、白が基調の意匠。
それは金属甲冑と言うには生物的で、甲殻類の外骨格なのか判別が困難だった。
機械的なフォルムに見えるし、有機的なシルエットである様にも感じられる。
あんな特殊な装備、現物はおろか、どんな資料でも目にしたことがない。
前腕の工具の様な装置(あるいは器官)と、両肩の形状が目を引く。
仮面を纏った様な頭部の鍬形も、立物なのか触角なのか。

「魔族だとしたら、こんな手の込んだ自殺をする動機が不明だわ」

神獣の戦いは無慈悲だった。ほぼ無抵抗の相手に対して一方的な攻撃が続く。
鋭い鉤爪を剥き出しにした前脚を振り上げて、終わりとばかりに敵を宙に放り出す。
全身甲冑は重い音、それでも外観の印象に比べれば幾分軽い衝撃音と共に地に落ちた。

「あれの材質も気になるわね。どうしたモノかしら……気は進まないけれど」

越権行為だが、現場裁量で神獣との超法規的な接触を試みる。
幸いなことに、一般的な乙女の嗜みとして古代言語の心得ならあった。
ついでに、”突撃”と”殺せ”の二単語だけは大抵の言語で発話できたりもする。

25 :Interlude :2019/05/17(金) 19:14:05.21 ID:dAw/FTdu

【ユースレス・キャスト()】

「”獣よ 森を護るあなたよ! 私は 所持するします 問うを 何かですか それは?”」

――”わからぬ。我が知識には無いモノだ。されど、危険な存在である事は確かだ”

「”私は 思うします 調べるを. そしては するしたい 神殿に運ぶ それを.”」

――”ならぬ。コレは森の秩序の破壊者だ。我が父祖と精霊神との盟約により、滅する”

「”私は 見るでした 光を大きく. それは ありでした 空に.
形は 輪でありでした それの似ています. そして 早い 消えるでした.
もしもすると それは 壊しでした 木の 土の そしては 石の 森を 神は 座ります.”」

――”我は見ておらぬ。光の円環とやらが消えたのであれば、同様にコレも消すだけだ”

全身甲冑に噛み付いた神獣が、首を反らして持ち上げ、顎に力を込める。
鋭牙と装甲は相互に軋みを上げて、ブレスト・プレートに罅が入った。
その亀裂から、極細粒砂の様な銀色の何かが止め処なく零れる。

「”獣よ 森を護るあなたよ! 形は 所持するします もしもすると 人族を 似ています.”」

――”人族であったとて変わらぬ。我は、古き盟約の下に秩序と静寂を守護する者なり”

罅割れた装甲板が、ついに砕けた。痛みに呻くかの様に頭部の水晶体が明滅している。
不意に、全身甲冑の両肩の装甲上部が跳ね上がった。やはり何かの装置なのか。
断面に配置されたレンズ機構から、烈光と轟風が同時に爆ぜて照射される。

『こりゃあ不味いのう! 伏せるんじゃ、お嬢さん!』

帝国軍の旗艦が健在だった頃、観艦式のフィナーレで見た魔導粒子砲と良く似ていた。
咄嗟に身を伏せた守護獣の背中を僅かに掠めて、二本の射線が天空へと注がれていく。

――――永い咆哮。これが断末魔というものなのだろうか。

その間、充分に蓄えた後脚の発条を解き放ち、神獣は俊敏に標的の首筋へと喰らい付く。
仰け反った全身甲冑の頭部で水晶体が光を失う。頭を垂れて、今度こそ動かなくなった。

「くっ……! 一体、何だったのよ。あの無駄な殺意の高さは」

『知らんがな。さっきも言ったじゃろう。ワシの方が聞きたいわい』

「……って、あんた共通語しゃべれたんなら最初から使いなさいよっ!」

『いや、お嬢さんがヘッタクソな下位古代語なんぞで話しかけてくるからじゃよ?』

「下手で悪かったわねっ! そんなコトより、説明してもらえるかしら。
この怪奇現象に関して手掛かりとか心当たりとか、本当に無いの?」

26 :Interlude :2019/05/17(金) 19:15:08.89 ID:dAw/FTdu

【ユースレス・キャスト()】

先程、地面に流れ落ちた銀色の何かが変質していた。
銀色の砂粒なんかじゃない。紅い液体―――血液だ。

『この”血”の魔力、何処かで……いや、そんな筈もなかろうて。
 再会を望むには、いささか時が経ち過ぎたのう、フィーザル』

「やっぱり人族……だったの?」

『人族如きが、こうもワシの毛皮を傷付けられると思うてか。牙先も欠けおったわ』

「それはそうだけど…。連中にだって、たまに無体な強さの魔術師がいるじゃない」

『彼奴等が使える魔術の程度なんぞ、たかが知れておるわい。
 おまけに、コレにはワシの魔力の通りがすこぶる悪かった』

「私は元々人間やってた身だから複雑な心境になるけれど、
 確かに一般的な人族だとしたら、もっと繊弱なはずだわ。
 この森の霊気も”瘴気”だなんて疎んでいるくらいだもの」

『ワシなぞ”魔獣”呼ばわりじゃぞい。異信仰に対する理解と歩み寄りの精神が足らん』

『まあよい。ワシが守らにゃならん盟約は”森の脅威を排除する”ところまでじゃ。
ねぐらに戻るから、その亡骸は好きにするがよい。神殿に運ぶなら止めもせん』

「―――何も見なかったコトにして、この森に適当に埋めるわ。こんなの私の調査対象外よ。
 推定人族の遺骸なんて厄物、下手に神殿に引き渡したら事情聴取だけで日が暮れるもの』

『然り。忘れるがよい。森の循環の輪に入れば、此度の罪も時の流れに浄化されよう。
じゃが、ワシのシマの祠が壊れたままでは格好が付かん。そっちだけは頼んだぞい』

無慈悲なのか寛容なのか良く判らなくない裁定だが、私とっては好都合だ。
おそらくは無関心なのだ。己の果たすべき盟約以外の全ての事象に対して。

「オーケー。隕石が墜ちたってコトにでもしておくわ。
 こんなわけのわからない厄介者と関わってる暇なんてないんだから。
 そうでなくても最近は、何処も彼処もナナシ対策でバタバタしてるっていう…のに――」

――最後まで言い切れなかったのは、それを待たずして神獣が姿を消したせいだけではない。
気付いたからだ。私が切って捨てようとした言葉には、途方も無い矛盾が含まれていた事に。

白色の鎧に、奇妙な模様。そして仮面。
歪んだ世界の境界から襲来し、魔術が一切通じない怪物。
死を契機にして、対象を自己と同質の存在へと変貌させる、魔性の侵略者。

「嘘……でしょ? まさか、コレがそうだって言うの?」

“Nameless Necromantic Assimilative Satanic Invader”――――不確定名称・NaNASIだ。
見れば、推定ナナシの甲殻は静かに復元を始めていた……この場で私が、やるしかない。

27 :Interlude :2019/05/17(金) 19:17:06.29 ID:dAw/FTdu

【ユースレス・キャスト()】

“静寂なりし墓所の王よ/静謐なりし凍土の主よ”
“冷血を以ちて彼の爪に/冷酷を以ちて彼の牙に”

魔方陣はおろか、魔術式を用意しておく時間も無かった。
けれど、インプロヴィゼイションの詠唱は専門外。
畢竟、在りモノのフレーズに頼る事になる。

“氷の戒め与え賜わん!/氷柱よ我が敵を穿て!/凍壁よ我が敵を鎖せ!”

去年の”声に出して詠みたい魔術式コンクール”の入賞作だ。
具体的には、一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させる。相手は死ぬ。
フッ、いくらナナシと言えど、この至近距離からの精霊魔術ではひとたまりも……

――――”久遠の冷霧よ、我が敵を緘する氷棺となれ!!”

私の術式は完成し、発動し、直撃した。そして、推定ナナシは……ただ、遠くを見ていた。

「なん…ですって…?」

氷結の魔術が契機となって、白き魔人にささやかな変化をもたらしたとすれば、
何かを思い出した様な気配を見せた事くらいだ。その一方で、私も思い出した。

「ああああぁっ!? そうだったああぁっ!?
 だから、ナナシには魔術なんて効かないんじゃない!
 私のバカバカ! ゴミ術師! クズ美少女! どうして肝心な時に……」

《親…父……》

父親を呼んでいるの? 断片的に得た材料を分析し、総合し、状況と照らし合わせて推測する。
導き出される答えは……”冷え切ったお父さん”。複雑な家庭環境で育ったナナシなのか。
大渓谷の方角へと向けられた仮面。その先から、新たなナナシが数体、飛来していた。
――――推定・ナナシのお父さんかっ!? 最悪の場合、お母さんと兄弟まである。

「……あの。ナナシ君、聞こえてる?
 私たち出会ったばかりだし、そういうのはちょっと早いかなーって。
 お父さんに御挨拶する心の準備とドレスの注文と殲滅部隊の手配をする時間をくれない?」

《俺は……うおおおおおおおっ!》

突然の飛翔。叫びを上げて飛び去るナナシを、他のナナシ達が追いかけて行く地獄絵図。
連中は超高速で遠ざかりながら、私の理解の範疇を越えた人外魔境の空中戦を開始した。

「仲間割れ? まさか本当に家族のいざこざ? 本当に何だっていうのよ、もう……!」

何も出来ないまま、危機は去った。ほっとすれば良いのか悔しがれば良いのか、わからない。
まるで、世界の意志(おとなのじじょう)から存在理由を剥奪されてしまった気分になる。
確かなのは、この面妖な仮面舞踏会で、もう私の出る幕は終わったという事だ。

28 : :2019/05/17(金) 19:18:47.32 ID:dAw/FTdu

名前:ブレイヴ
種族:人/ネームレス
年齢:19/数十分前に現界
性別:♂/−
身長:180cm/2m(頭部ブレードアンテナを含む)
体重:75kg/−kg(現界する装備質量により不定)
性格:記憶喪失
所持品:ブレイヴクリスタル
容姿の特徴・風貌:人類/魔導強化外骨格
簡単なキャラ解説:不特定多数の異界の勇者達の力を統合し身に纏う

【属性】異世界の勇者の姿と力を手にした直後、不完全な汚染を受けた現地人
【所属世界】下天の勇者達

30 :ソロモン :2019/05/17(金) 21:50:36.27 ID:8H3Xnad9

召喚の儀式がクライマックスを迎えようとしているまさにその時、
地下室の天井が崩落し、一人の青年が落ちてきた。
>「……全く、度し難い程に詰んでいるなこの国は」
「ノインか……」
青年と老人の視線が交錯する。
彼はいち早くこの世界に召喚された勇者の一人だ。
>「魔術師ソロモンよ。貴様達の願い通りに時を稼いだが、その様子を見るにどうやらまだ儀式を終えていない様だな」
「ノイン、どうやらナナシどもがこちらの魔力を嗅ぎつけたようじゃな」
>「ナナシの群れ共は直ぐそこまで来ている。危急ゆえ迅速に決断せよ。召喚を諦めて退避するか――――或いは諦めずに死ぬかを」
「無論、死ぬまで……!」
この儀式には、月の満ち欠けをはじめとする天体の動き、方位、場所まで計算されている。
わざわざ打ち捨てられた城で儀式を行うのもそのためなのだ。
もしも今召喚を諦めたら、次はいつ可能になるか見当がつかない。
それゆえ、今この場で召喚を成功させる必要がある。
例えその結果、命を落とすことになろうとも……

ソロモンの思いとは裏腹に、ナナシは何の遠慮もなく地下室へと侵入してきた。
その体躯はノインの倍はあり、まるで大人と子供のようである。
ノインは果敢に剣で立ち向かったが、ナナシの拳が彼をかすめ、地下室の壁へ叩きつけられた。
「ノイン!!」
ソロモンはすぐにノインへ回復魔法をかけたいが、今は動くことができない。
術を完成させなければならない。
ソロモンは自分の意識からノインのことも、そして迫り来るナナシのことも締め出して、
魔方陣へ意識を集中させた。

31 :ソロモン :2019/05/17(金) 21:51:29.55 ID:8H3Xnad9

魔方陣が光を増し今まさに勇者が召喚された。
それは……
>メ タ ボ の お っ さ ん が 現 れ た。
「…………?」
ソロモンは一瞬、自分は商人を召喚したのかと疑った。
ソロモンの世界で太っている人間は貴族か商人のどちらかと相場は決まっているが、
目の前の人物は、失礼ながら、貴族には見えなかったからだ。
実は当たらずしも遠からずだったことは、この時のソロモンには知る由もない。
ソロモンの背後には巨体のナナシが迫っている。
>「変・身!」
目の前の男性はそう叫ぶと二対四枚の翼をもつ妖精美少女へと姿を変えた。
ソロモンは魔法使いにとって基本中の基本を自分が忘れていたことを自覚した。
すなわち、見た目と真実は時に一致しない、ということを。

>「これで……どうだ!!」
妖精の少女は周りの瓦礫に金の粉をふり撒くと、それを浮遊させて次々と巨体のナナシに浴びせた。
「……効いている!」
ソロモンは思わずそう口に出していた。
やはりこの世界の魔法使いとは違って、ナナシにダメージを与えられる存在『勇者』なのだ。

ソロモンの背後で、突如頰を張る音が聞こえる。
振り向くと一人の少女が立っていた。
状況から察するに、彼女は魔方陣から現れた二人目の勇者に違いない。
しかし……
(若すぎる……)
もしかしたら先ほどの男性(橘川)と同じように、見た目と真実が一致していないのかもしれない。
しかしそうでなくても異世界の者達を戦わせるのに罪悪感を感じるソロモンなのだ。
子供を巻き込んでしまうことは心苦しい限りだった。
>「ええと、その……状況を、説明して下さわーっ!?」
突如叫んだ彼女の視線を追うと、もう一体の巨体のナナシが天井に空いた穴からこちらをうかがっている。
「あれはナナシ!この世界の敵じゃ!」
>「……あれ、あたしが対処しなきゃなんですか……!?」
ソロモンはそう聞かれて、答えに詰まった。
本当に彼女を戦わせるのか?
ソロモンはまず、自分が出せる最善策を試みることにした。
「これでもくらえ!!」
ソロモンの大杖から、炎と雷の複合魔法が天井のナナシに向けて放たれた。
並みの魔物であれば、簡単に灰になる威力の魔法である。
しかし、それはナナシに対して何の効果も示さなかった。
わかりきった結果だった。しかし、試さずにはいられなかった。
魔力を大幅に使ったソロモンはその場で膝をついた。

32 :ソロモン :2019/05/17(金) 21:52:24.05 ID:8H3Xnad9

その後に起こったことは、全て突然の出来事だった。
>《うおおおおおおっ!》
突如現れた白騎士が、2体いたナナシを瞬時に斬り伏せてしまったのだ。
誰なのだろうか?今彼は人間の姿となって床に倒れている。
「いや、わしはこの者を知らぬ。ノインの知り合いか?」
ソロモンは白騎士がノインを見ていたことを思い出して、そう尋ねる。
「いずれにせよ、ナナシを倒せるのなら『勇者』に違いあるまい」
しかし、戦っている時の姿はナナシのようでもあった。
ソロモンはそのことに一抹の不安を感じつつも、自分の務めを思い出し、魔力回復薬を飲んだ。
「ノイン、大事はないか?他に怪我をしている者は?回復魔法をかけよう」

どこか遠くでナナシのものと思われる叫び声が聞こえてくる。
ここは安全な場所ではない。
「じきに他のナナシがやってくるはずじゃ。すぐにここを離れなければならん」
「この城には、城主が包囲された際に秘密裏に脱出するための地下道がある」
「そこから城の外へ脱出する。だれかその男(ブレイヴ)を運べるか?」

ソロモンは地下道への入り口へと一行を誘った。
地下道へ入ると、ソロモンは説明を始めるだろう。
この世界で起こった戦争、そしてバベルとナナシ。
そしてナナシを倒すために『勇者』を召喚する儀式を行ったことを……
「わしの名はソロモン。この世界にいる魔法使いの一人じゃよ」
「……さて、今度はお主らのことをわしに聞かせてくれんかのう?」

33 : :2019/05/17(金) 21:53:05.39 ID:8H3Xnad9

地下道の奥で、ドンドンと太鼓を鳴らすような軽快なリズムが聞こえてくる。
それは巨大な蜘蛛の足音であった。
蜘蛛の王、そうよばれた存在がナナシと化した成れの果てである。

34 :ノイン :2019/05/18(土) 19:37:40.97 ID:YHBXBtkc

攻撃の余波で壁に叩きつけられた事により、青年の肺からは空気が失われ、僅かの間その意識が失われた。
それは時間にして1分にも満たない事であったが、しかしその1分こそが肝要であった。

(不味い……!)

目が覚めた瞬間、青年の脳裏に走った感情は焦燥。
伝え聞く限りでは、召喚の儀を執り行う魔術師ソロモンは優秀な魔術師であるらしい。
並みの存在が相手であれば、目を瞑っていても危なげない勝利を得る事が出来るとの事だ。
けれど……今回の相手は「ナナシ」である。
青年は、ナナシにはこの世界のあらゆる魔術が通用しないという事は聞き及んでおり、それを目にしてもいる。
その原則に則って言うのであれば、ナナシを前にしたソロモンは無力な老人に過ぎない。

本職の戦士ではないとはいえ、武芸を嗜んでいる青年ですら脅威を覚えるナナシという怪物。
その脅威に1分も晒されていれば、ソロモンがどのような状態になるかは想像に難くない。
現状を打破すべく軋む体を動かし、最悪の自体すらも想定しつつ視線を前へ向ける青年。
だが、しかし。その目に飛び込んできた光景は最悪からも、或いは最良からも大きく異なるものであった。

>「変・身!」

召喚陣の放つ光の中から現れた、年の頃は40を超えているであろう肥満体系の男性。
その男性が、瞬きよりも早く姿を少女めいたものへと変貌させ、果敢にナナシへと立ち向かっていく。
如何なる原理かその身は宙を舞い、その身体から落とす金粉は瓦礫を隷属させ、さながら戦場の槍襖の如くナナシに痛撃を与えていく。

(狼男〈ライカンスロープ〉の様な変身能力を持った魔物……いや、違うな。奴の奇妙な術式は、ナナシに打撃を与えている。であれば、アレが――――アレこそが、召喚されし勇者という訳か)

勇者。勇気ある者。人類の最後の救い手。
この世界に危機が迫るその度に人々を救ってきたという、御伽話の救世主。
埃を被った絵巻物に描かれた伝説が、此処に再演される。

そして、此度の危機に呼び出される勇者は一人だけでは無い。

>「ええと、その……状況を、説明して下さわーっ!?」

再度召喚陣が光を放てば、其処には金色の髪を短く纏めた、十代中頃であろう少女の姿。
一見すれば、この場には似つかわしくない力なき者に見えるが

(……この世界の技術では製造困難であろう服装。混乱している様だが、恐怖している様には見えぬ態度。ならば、あの女もまた勇者なのだろう)

思考を整理し、剣を杖代わりにして立ち上がる青年。
幸いな事に、意識が飛びはしたがダメージ自体はそれ程大きく無かったようで、一歩前に出した脚はよろめく事も無く確りと大地を踏みしめた。
それを確認すると、青年は更に歩を進める。その目的は――当然の事ながら、勇者等の援護。
いかな異界からの勇者とはいえ、混乱の最中に強襲を受けては不覚を取る事もあろう。
強者が弱者に不意を撃たれ命を落とす事等、古今どこの国の戦記にも有る事だ。
ならばこそ、青年はそれを防ぐ為に動く決断をしなければならない。
ソロモンが爆轟の如き魔術をナナシに向けて放ったのを視界に捕えつつ、右手に嵌めた指輪……この世界の其れとは異なる意味を持つ『勇者』に掛かる遺物に、一瞬視線を落とす。

35 :ノイン :2019/05/18(土) 19:38:31.35 ID:YHBXBtkc

けれど――――急転直下。
青年が自身の手札を切る事を思考し始めた、まさしくその瞬間。
《うおおおおおおっ!》
元々崩れていた地下室の天井を更に大きく破砕しながら、彼はやって来た。『白亜の騎士』がやって来た。

(っ、アレは『どちら側』だ……!)

見た事も無い奇怪な外装に、暴風を友とし空を駆けるその姿は、ナナシには見えない。されど、人間にも見えないのだ。
青年は猜疑と共に、手に持つ魔剣の切っ先を白騎士に向けかけ……けれど、それが成される前に白騎士が答えを出した。
切り裂かれるのはナナシの体。頑強で痛みなど感じてすらいないようなその肉体は、白騎士の双剣に寄って切って捨てられた。

(何たる暴威か、何たる猛威か。だがそれでも、あの怒りの様相と流れ出る血液……ああ、そうだ。アレは人間だ。少なくとも人間だ。ならば――――何も問題は無い)

自分たちの怨敵たるナナシを敵とした白騎士は、ナナシが消え果るのを確認すると負傷した人の姿を取り、倒れ伏す。
それを見届けた青年は、魔剣を鞘へとしまうとソロモンの近くへと歩み寄る。

>「いや、わしはこの者を知らぬ。ノインの知り合いか?」
「少なくとも私の知己ではない。お前の言う通り、異界の存在であろうとは思うがな」

勇者達の前で自身の名前を呼ばれた事に内心で舌打ちしつつも、それを表情に出す事も無く、青年――ノインは、ソロモンの推測に同意をして見せる。

>「じきに他のナナシがやってくるはずじゃ。すぐにここを離れなければならん」
>「この城には、城主が包囲された際に秘密裏に脱出するための地下道がある」
>「そこから城の外へ脱出する。だれかその男(ブレイヴ)を運べるか?」

そして、遠く響く地鳴りのような音を確認すると、地下道へと進まんとするソロモンの後に続き……けれど、その前に一度だけ勇者達へと振り返り口を開いた。

「異界の戦士達よ、各々が置かれた状況に疑問はあろう。だが、死ぬ事を良しとせぬのであれば、今はあの翁の後に続いておけ」
「半時もすれば、此処には先の怪物の『群れ』がやってくる……互いに、怪物の餌になる事は望まないだろう?」

ノインの声に感情の色は無く、淡々と事実のみを語っているように見える。
そして、不親切な事にそれ以上の言葉を重ねる事無く、ノインは地下道へ向けて歩き出すのであった。

36 :ノイン :2019/05/18(土) 19:41:48.30 ID:YHBXBtkc

道中ソロモンの口から語られる、この世界の歴史と勇者召喚についての説明。
それについて、ノインは口を挿む事無く沈黙を保ち続けた。
沈黙の理由は、語られる内容の大半がノインにとって既知のものであったという事と……そして、語るソロモンと勇者達の人間性を見定める為であった。
何を語り、何を騙り、何を話し、何を隠し、何をさせようとするのか。
ノインは、それを見極める為に寡黙に徹する事にしたのである。

「私はノイン。お前たちよりも随分前に、異界より呼ばれた者だ」

故に、ノインの口から語られた情報はただこれだけ。
随分な対応であるが、少なくとも名前とこの世界の人間では無い事実は勇者達に伝わった事だろう。
そして、各々が語るべきことを語り、地下道も半ばまで進んだ頃の事。

「……?」

不意に、馬蹄が土を踏みしめたかの様な音が、石壁に反響し鳴り響いた。
地下道とはいえ、その上――地上部は道。馬車が走っていてもおかしくは無いのだが……しかし、奇妙な点が二つ。
一つは、鳴り響く馬蹄の如き音の数が明らかに8つ有るという事。そしてもう一つは、音は一行が進むその先から聞こえて来るという事だ。

「――――!」

そして、音が響いてから僅かの後に、突如として振り返ったノインが抜剣する。
その行為に対して勇者達が警戒を見せるだろうが、意に反す事も無く、ノインは眼前の鐘といとり、両名の居る方へと向けて剣を振りおろした。

『ヂ、ギィィィ……!』
「虫ケラが、不敬であろう」

床に何かが落ちる音。そちらを見れば、其処には空間から滲み出る様にして現れた、白い蜘蛛の脚が一つ。
そう。ノインの剣は、あと数歩で鐘といとりへ届かんとしていた不可視の襲撃者の脚を、見事に切り落としていたのだ。
そして脚が切り落とされると同時に、何も無かった筈の空間から現れたのは、蜘蛛の王――――『スカーレットスパイダー』と呼ばれた個体の成れの果て。
巨大な白い体の蜘蛛が黒い仮面を被った姿……一見してナナシである事が判る姿と化した蜘蛛の王は、異形の口を開き威嚇の姿勢を見せる。

「音響を操作する事で正面からの襲撃を装い、姿を隠しつつ奇襲する……暗殺向けの種族特性の様だが、生憎と闇討ちには慣れていてな」

強大で凶悪な敵。だが、かつて何度も暗殺者からの襲撃を受けた経験値がものを言い、ノインはその襲撃に対処して見せた。
そして、敵が居るという事が判れば――――今此処に居る、多数の勇者達が後れを取る事はないであろう。

問題があるとすれば、ソロモンからこの世界や自身の境遇についてを知らされた勇者達が、どの様な反応を見せるかだが……

38 :橘川 鐘 :2019/05/19(日) 16:40:30.20 ID:FIDO3r2E

地下道に入り、老人が解説モードに入ったのでいったん変身を解除する。
(ちなみに変身を解いても魔法の粉の効果は一定時間継続するので意識不明の男性が墜落することはない)

「この世界の者には倒せぬ化け物か、難儀な話だ……ところで貴方方はこの世界の者なのか?」

>「わしの名はソロモン。この世界にいる魔法使いの一人じゃよ」

>「私はノイン。お前たちよりも随分前に、異界より呼ばれた者だ」

>「……さて、今度はお主らのことをわしに聞かせてくれんかのう?」

「橘川鐘だ。職業は……玩具屋店主兼妖精戦士と言うべきだろうか。変身した姿の名はティンカー・ベルという。
ああ、あれは異能といってそちらで言うところの魔法のようなものだと思って貰えればいい。
元いた世界は元々は魔法など無いはずの世界だったのだが……ある時を境に異能と呼ばれる能力に目覚める者が出始めた。
超常の力を持つ異能者は恐れられ壁に囲まれた都市に隔離されることになった。私はそんな隔離都市の住人のうちの一人だ。
しかし……久々に出た壁の外がまさか異世界だとはな」

このような感じで各々が自己紹介等をし終えた頃。ノインが並々ならぬ様子で突然抜剣した。

>『ヂ、ギィィィ……!』
>「虫ケラが、不敬であろう」

目の前に何かが落ちる。それは巨大な白い蜘蛛の足。
見るからに刺々しく、直撃すればかなりのダメージは免れなかっただろう。
私はすんでのところでノインに救われたことを理解した。

>「音響を操作する事で正面からの襲撃を装い、姿を隠しつつ奇襲する……暗殺向けの種族特性の様だが、生憎と闇討ちには慣れていてな」

「危ない所だった……礼を言うぞ」

40 :創る名無しに見る名無し:2019/05/20(月) 18:10:36.68 ID:d/iOaHoZ

すんげえ肥満臭い

41 :創る名無しに見る名無し:2019/05/21(火) 13:05:00.45 ID:zjremk7Z

支援

43 :大饗いとり :2019/05/28(火) 07:49:25.39 ID:E3MlSWvY

あたしの叫び声に、お爺さんは即座に反応し、答えてくれた。

>「あれはナナシ!この世界の敵じゃ!」

あ、日本語!? こんな世界でも言葉は普通に通じるんだ、便利……。
でも、どういう仕組みなんだろう。単に言語体系が同じ? それとも翻訳魔法的なやつがあるとか?
……いや、そこを深掘りしてどうするあたし。そんな余裕はないでしょ。
一定程度『そういうもの』は『そういうもの』としてスルーしていかないとキャパオーバーする。あたしは悟った。

と、あたしが下手の考えを巡らせてる間にもお爺さんは動いてくれる。

>「これでもくらえ!!」

お爺さんの持ってる杖から、炎とか雷とかがものすごい勢いで生み出され、仮面の怪物に飛んでいく。
うわ、このお爺さんすごい。きっと名のある魔法使いとかそんな感じの人だ。
……その割には、魔力を感知できるあたしの目(あたしが持つ魔法のうちの一つ、『我が名は魔女(コールドウィッチ)』の効果だ)には、特に何も映らないんだけど。
魔法の体系が違うとかなのかなあ……と、のんきに分析している間にも、炎と雷は怪物を一気に飲み込んだ。
やったか!?

>しかし、それはナナシに対して何の効果も示さなかった。

「……え、ええー……」

いや、ノーダメってあーた。基本鷹揚なあたしもこれにはドン引きである。
別にお爺さんの魔法がハッタリだったわけじゃないはずだ。その証拠に、魔法が着弾した周囲の瓦礫は吹き飛ばされたり焦げたり溶けたり(!)している。
なのに、あの怪物……お爺さんが言うところのナナシには傷一つない。
ゲームとかなら 0 の数字がぴこーんと飛び出てきそうなぐらい無傷だ。
これが意味するのは……。

「魔法への耐性みたいなやつ? でもあの妖精さんの瓦礫は下の奴には効いてるし……」

妖精さんの瓦礫操作(仮称)とお爺さんの魔法。
そこにあんまり違いはないように見えるけど、何か違うのだろうか? うーん。
……いやいや、悩んでる場合じゃない。あの怪物は今にもこちらに飛び降りてきかねないのだ。
そうなったらあたしも高みの見物とはいかなくなる。
何か対処を考えないと……。

44 :大饗いとり :2019/05/28(火) 07:50:16.09 ID:E3MlSWvY

……と思っていた時期があたしにもありました。
あたしの目の前には、突如なます切りにされたナナシが2体分。
それをやってのけたのは、謎の白い騎士……のような何かだ。
すごいスピードとパワー。あたしでなきゃ見逃しちゃうね。
いや、ごめん、嘘。結構途中の過程は追いきれなかった。

その白い騎士さんはというと、倒れ伏すと人型の何かから人に変貌した。
……変身が解けた、という感じだろうか。どっちが本当の姿か、あたしには分からないけれど。

「……少なくとも敵の敵ではある、って事かなあ。
 とりあえずは味方って考えちゃっていいよね、たぶん」

あたしがそうつぶやいた直後、お爺さんが気になる一言を放つ。

>「いずれにせよ、ナナシを倒せるのなら『勇者』に違いあるまい」

……勇者? ブレイブなんちゃら的な意味合いで?
つまりこれはやっぱり……。

「異世界召喚……的な、奴……? えー、マジかー……」

あたし、召喚時にチートとかもらってないんだけどなあ。
元々がだいぶチートだって噂はないではないけども。
才色兼備で富も権力も……まあ、召喚だと後半は意味ないけどさ。
むむむ、これはピンチ。あたしの力が半減では?

などとあたしが無駄な一人語りをしている間にも、お爺さんと他の人たちの話は進んでいく。

>「じきに他のナナシがやってくるはずじゃ。すぐにここを離れなければならん」
>「この城には、城主が包囲された際に秘密裏に脱出するための地下道がある」
>「そこから城の外へ脱出する。だれかその男(ブレイヴ)を運べるか?」

魔法使いのお爺ちゃんと、

>「そういうことなら私に任せろ」

喋りが妙にりりしい妖精風の女の子、

>「異界の戦士達よ、各々が置かれた状況に疑問はあろう。だが、死ぬ事を良しとせぬのであれば、今はあの翁の後に続いておけ」
>「半時もすれば、此処には先の怪物の『群れ』がやってくる……互いに、怪物の餌になる事は望まないだろう?」

コーディネートや髪の色まで黒で統一した青年剣士、

>《俺は…死なない……まだ…死ねないんだ……》

怪我はお爺ちゃんに治してもらったみたいだけど、まだ意識を取り戻さない、白騎士だった人、

そして、

「あれの群れ……うう、割とぞっとしないなー。
 とりあえずついていくしかないみたいだけど、状況はちゃんと説明してくださいねー?」

半分素、半分演技で『あんまり戦いなれてない女の子』風にふるまうあたし。

奇妙な一団での道中は、こうして始まったのでした。

45 :大饗いとり :2019/05/28(火) 07:50:43.99 ID:E3MlSWvY

お詫び。
先ほどの奇妙な一団メンバーリストに一部誤植がありました。

誤:喋りが妙にりりしい妖精風の女の子
正:なぜか能力で妖精風の女の子に変身するメタボのおじさん。

お詫びして訂正させていただきます。

「なんでさっっっ!?」

思わず突っ込んでしまうあたしである。
いや、どういう経緯で身に着けたのか知らないけど能力的に業が深すぎるでしょこのおじさん……。
この能力とおじさんの組み合わせをデザインした誰かがいるなら小一時間問い詰めたい。そんなお気持ちでした。

さておき。
お爺さん……ソロモンが状況を説明してくれて、大体のことは分かった。
二つの国の戦争。
戦争を終わらせた一つの大魔法。
その魔法が原因で発生した仮面の怪物、ナナシ。
そして、ナナシを倒すために召喚された『勇者』達……。

……。

「えーと……一つだけ言わせてもらっていいかな」

おずおずと手を上げて、発言を申し出る。

「……いや、まあ、この世界の人達としても、余裕がなくてしょうがないのは分かるけどさ。
 なんかこう……あたし達への配慮が足りないよね……」

このセリフは半分本音、半分演技だ。今後、あたし達への対応に気を使ってもらうための布石である。
こういうセリフは「率直だが思慮が足りず、しかし時々ハッとさせられる事を言う小娘」ポジションのあたしからじゃないと言えないので、
今のうちに積極的に言っておくのが吉だ。
ソロモンがあたし達を完全に使い捨てるつもりだったら無駄なあがきだけど……今のこの人はそこまで非道には走れないタイプ、そんな気がした。
とはいえ、言いすぎて機嫌を損ねても困るのでほどほどにしつつ、他の人たちの自己紹介を聞く。

>「わしの名はソロモン。この世界にいる魔法使いの一人じゃよ」
>「私はノイン。お前たちよりも随分前に、異界より呼ばれた者だ」
>「橘川鐘だ。職業は……玩具屋店主兼妖精戦士と言うべきだろうか。変身した姿の名はティンカー・ベルという。

「あたしは大饗いとり。名前の雰囲気からして、橘川さんとは似た世界の出身になるのかな?
 職業は学生……兼、魔法少女。あたしのいた世界だと女の子が魔法の力で変身して戦いあう、って事が秘密裏に行われててね。あたしはその一人。
 ソロモンさんの魔法とは名前は同じでも似て非なる感じかな……形式が違う、みたいな?
 あたしも変身できるんだけど、変身しなくてもそれなりの魔法は使えるよ。たぶん、ソロモンさんほど万能じゃないけ……」

自己紹介というのは、これでなかなか神経を使う作業である。
だから、気づくのが一瞬遅れた。
ノインがこちらを向いて抜剣し、剣を振り下ろそうとしている事に。

「どぉぉぉぉっ!?」
>『ヂ、ギィィィ……!』
>「虫ケラが、不敬であろう」

もちろん、その剣はあたしたちに向けられたものではない。
不埒な襲撃者がいたのだ……そういえば、先ほど前の方から何か大きな生き物が歩む音が聞こえた気がする。

>「音響を操作する事で正面からの襲撃を装い、姿を隠しつつ奇襲する……暗殺向けの種族特性の様だが、生憎と闇討ちには慣れていてな」
「あ、あっぶな……ありがと!」

47 :創る名無しに見る名無し:2019/05/30(木) 12:21:38.17 ID:jd9Oq8Yj

米軍の爆撃機がアップしてる
まだこないかな

48 :ブレイヴ :2019/06/01(土) 06:49:02.17 ID:UZYac6IU

【コール・ブレイヴ()】

このまま、ずっと眠っていられるならば。
何時か誰かが、あの白い光の向こう側に俺を呼んでくれるだろうか。
現実が、覚めない夢に与えられた別名であるなら、目を覚まさなければ、全ては昔のままだ。

『わしの名はソロモン。この世界にいる魔法使いの一人じゃよ』
『私はノイン。お前たちよりも随分前に、異界より呼ばれた者だ』
『橘川鐘だ。職業は……玩具屋店主兼妖精戦士と言うべきだろうか』
『あたしは大饗いとり。名前の雰囲気からして、橘川さんとは似た世界の出身になるのかな?』 

俺の名は――――わからない。俺は誰だ? 俺は何者で在れば良い?

だが、此処が何所であるのかは判る……此処は、贖罪の地だ。
審判も断罪も意味を成し得ず、冥府へと堕ちる事さえも許されてはいない。
血塗れの衣を纏った者が語る懺悔に耳を傾ける者など、此処には誰も居ないのだから。

49 :Interlude :2019/06/01(土) 06:51:00.25 ID:UZYac6IU

【ブレイヴセット・システム()】

「ついに、此処にもネームレスが現れたか。時は、我々を待ってはくれなかった。
 だが、完成したぞ……これが第二の新型ブレイヴ・クリスタル”インフェルノ”だ」

「悪くないタイミングだよ。運命的じゃないか、父さん。
 ネームレスの奴らに復讐する機会が同時に来るなんてさ。
 これで、やっと母さんとミリヤの仇が討てるんだ、僕達の手で!
 三人分の新型が間に合えば良かったけど……残念だったね、兄さん」

「―――聞くのだイザヤ。二人目の新型ブレイヴになるのは、コウヤだ」

「……急に何を言い出すのさ、父さん。どうして僕じゃないんだい?
 魔術だって武術だって僕達に勝てないコウヤ兄さんに、どうして!」

「これは以前から考えていた事だイザヤ。私は、もうこれ以上家族を失いたくない。
 お前は魔術戦士だ。試作型のブレイヴセット・システムでも自身を守る事が出来る。
 コウヤは違う。ネームレスと対峙した時、完成されたブレイヴの力による助けが必要だ」

「もう時間が無いけど……今からでも父さんのクリスタルを、兄さん用に再調整しよう。
 魔術戦なら僕より父さんの方が得意なんだ。父さんなら、試作型でも充分に戦える」

「私の”コキュートス”は術師の魔力を乗算し、異界の魔導属性に書き換える。
 コウヤでは……いや、魔術の素養なき者では、充分な戦闘力を得る事が出来ん。
 だが、試作を経て完成した”インフェルノ”ならば、異界の力それ自体の加算が可能だ」

「だったら尚更じゃないか。僕が使えば絶対に”インフェルノ”の性能を引き出してみせるよ。
 それを兄さんに渡す? 忘れちゃったのかい? 今までの苦労を! あの日の悔しさを!
 僕達から母さんとミリヤを奪ったネームレスと、全力で戦う為のブレイヴだろう?」

俺は、イザヤの考えを理解した。いや……血を分けた双子だ。理解ではなく共有だった。
目を逸らす事の出来ない、ネームレスに対する怒りと憎しみ。だが、それだけではない。
強大な力は、それに比例する危険を呼び込む。それは、自分の方が背負うべきだと。
合わせ鏡の様だった。向き合えば、互いの心が互いに映る。親父もそうなのだろう。

故に二人は、現状で考え得た最良の選択肢を提示した。
だが、俺は思う。母さんもミリヤもきっと、そんなことは望んでいない。
彼女達が願うとすればそれは……これ以上、自分達と同じ想いをする人々が現れない事だ。

ならば――――俺は、どう答えるべきなのだろうか。

51 :ブレイヴ :2019/06/01(土) 06:55:30.52 ID:UZYac6IU

【コール・ブレイヴ()】

『…――生憎と闇討ちには慣れていてな』
『危ない所だった……礼を言うぞ』
『あ、あっぶな……ありがと!』

ネームレスの奇襲と時を同じくして、ベルの浮遊魔術が効果を失った。
狸寝入りを続ける訳にも行かなくなった俺は、冷たい地下に降り立つ。
目覚めの刻を告げる妖精の鐘という訳だ。俺はソロモンの肩を掴んだ。

「見えるか……危険に晒され、戦いを余儀なくされた者達の姿が。
 貴様達の戦時判断で呼び込んだ結果が、この有様だ。
 その選択で、これまで何人の人々を殺した?
 これから何人の勇者が死ねばいい?」

肩に置いた右手に力を込め、左手を自身のジャケットに当てた。クリスタルは、無事だ。
ついでに、治療を受けた身体を確かめる。外傷は概ね塞がれているが、それだけだった。
ネームレスの魔術耐性が俺の意志とは無関係に、この世界の回復魔術を拒絶したらしい。

「確かに貴様は非道だ。貴様は非力だ。だが、この期に及んで傍観者でいられると思うな。
 覚悟しろ。そして誓え。貴様の願いの下に集った勇者達を導き、この世界を救うと。
 一時たりとも休まずに知恵を働かせ、行動し、最良の結果を出して見せろ」

神が赦したとしても、俺はソロモンの偽証を許さない。安息も許さない。逃避も許さない。

「その意志を捨てない限り、この俺が貴様の生命を……いや、貴様の叡智を守り抜く。
 一緒に地獄で裁かれてやるのは、何もかもが終わった時だけだ。理解が出来たか?」

そのまま掴んだソロモンの肩を引き、己の背後に押しやる。俺は、前線に向かい立った。
血液と異なる色の真紅に染まったジャケットが戦場の風に翻り、長い影法師を躍らせる。

「ならば喜べ、ソロモン。貴様の願いを叶えてやる――――俺は、ブレイヴだ」

52 :ブレイヴ :2019/06/01(土) 06:58:31.29 ID:UZYac6IU

【コール・ブレイヴ()】

『――食らえ!』

ベルが地下室の3m級に放っていた岩弾は、あの金色の媒介を通した魔術だった様だ。
ラグナロク粒子とは異なる原理で、散布した対象を制御している。
俺を此処まで搬送したのも奴の仕事らしかった。

“―――I am the brave of my brand.”

投影した精霊銀の刀剣の重みに、懐かしさを覚える。
この世界に現界させたのは、初めての事であるのにも関わらずだ。
異界の魔術師は、この剣をペンやフォークよりも握り慣れていたのでは無かったか。

“Here is a blade over the gate of divergence.”

だが―――その懐かしさが、今の俺には重過ぎた。
これを手にしたままでは前に進めない。彼の魔術師が、そうであった様に。
秒針の迷いを賭博師が蹴り飛ばした。ベルの足下の地面に、ミスリルブレイドが突き立つ。

「……お前には随分と世話を掛けた様だな、玩具屋。
 そいつは礼の代わりだ、追撃が必要なら使え。そして神に祈りを捧げろ。
 串刺しになった蜘蛛の中から、アシスタントのバニーガールが笑顔で出て来ます様に、だ」

イトリは自らの背に手を当て、瞑目していた。
いや、顔や関節の向きから察するに、背ではなく腹か。
身体の起伏からは全く判断が付かない為、確証は持てないが。

『I know I have the body but of a weak and feeble girl』

年頃に比して発育状況が芳しくない様に見える理由は、直ぐに推測が付いた。

『But I have the heart and stomach of a king!!』

外観に対応する”Queen”ではなく、あえて”King”をスペルに採用している。
“Body”は”Girl”だが”Heart”は”King”……つまり、ベルとは逆ベクトルのアレだ。
発動に性、数、格の整合を必要としないシンタクスで構成される魔術言語は少なくない。
異界のソレであれば尚更だが、この場合は、そういうカミングアウトだと理解するのが自然だ。

人は、自身の生まれを選択する事が出来ない。染色体も、周囲を取り巻く環境もだ。
その意味で、異界より召喚された勇者は、この世界で二度目の生を受けたに等しい。

『よーい、しょっと!』

そのコイノボリ体形は、巨人の項を狙う猟兵の如き立体軌道を蜘蛛に仕掛けている。
相手の弱い部分の柔らかさを確かめ、その継ぎ目に自身の錫杖を突き込み、
悲鳴を上げさせて嬉しそうに体液を浴びるイトリと、視線が合った。
……王は、あの手のプレイがお好みか。この世界は残酷だ。

「救われないな……生まれの哀しみを背負った勇者というわけか」

其処に幾許かの憐憫の情が滲んでしまっていた可能性は否定できない。
無意識の内に、若干かわいそうな子を見る目を向けていた恐れがある。

無論、この場で最も哀れな存在は、蜘蛛のネームレスだ。
色々な所に色々なモノを差し込まれ、だらしなく体液を垂れ流す晴れ姿は、
全年齢向けのステージに立たせた場合、倫理委員会の審理を免れない様相を呈していた。

53 :ブレイヴ :2019/06/01(土) 06:59:25.02 ID:UZYac6IU

【コール・ブレイヴ()】

性別に関して心身の同一性に難儀なモノを抱えていると思われる二名の勇者。
彼(彼女)らは異界から召喚された現況と、出身世界、職業、使用魔術の概要を語った。
だが、ノインは違う。勇者からの不信が最も致命的な初期段階での寡言。注目すべきは二点。

その一つが召喚時期だ。”随分前”から現在に至る過程の周辺状況が見えて来ない。
―――意図的に見せていない。これはソロモンとノインにとって不利益な選択だった。

召喚時点の戦闘に於いて、両名は敵に有効打を与えていない。
その直後に閉鎖空間への誘導。事実、其処には暗殺者が潜んでいた。
これが仮に両名の仕組んだ罠であったならば、相当な被害が生じ得た状況だ。

勇者達が彼らに信用を置く判断材料は乏しかった。
……ノインが蜘蛛の奇襲に対処して見せるまでは。

裏を返せば、斯かる状況下で誘導に応じた二名は、相応の備えが出来ていたという事になる。
不測の事態に際して、対抗可能な複数の戦闘手段を所有していると見るべきだろう。
彼(彼女)らの戦闘力は高い。切り札や隠し玉の幾つかを温存している筈だ。

もう一つは、”不敬”というキーワードだ。では本来、敬意を払うべき対象は誰であるのか?

最年長にして高位の魔術師であるソロモンに対しての敬意か。
……いや、三人称は”あの翁”だった。その可能性は消える。
それでは、世界の救世主たる異界の勇者に対する敬意か。
それも違う。他の勇者は被召喚者として後続に当たる。
呼びかけた二人称も”お前たち”だ。俺は結論を得た。

――――この青年だけが、”己が高貴な存在であるという自覚”を持っている。

「ノインと言ったな。いや……ここは黒の王子、とでも呼んでおくべきか?」

俺が猜疑の念を隠しもせずに、明確な疑問形を選択した理由は一つだ。
ブラフで揺さぶりを仕掛け、反応を観察する事で情報を引き出す為、ではない。
お前……実は女だったのか! 的な展開に備えてのコトだ。あいつも王女かもしれない。

57 :ノイン :2019/06/09(日) 00:52:17.72 ID:UMmQ9KTQ

>「見えるか……危険に晒され、戦いを余儀なくされた者達の姿が。
>「その意志を捨てない限り、この俺が貴様の生命を……いや、貴様の叡智を守り抜く。
>一緒に地獄で裁かれてやるのは、何もかもが終わった時だけだ。理解が出来たか?」
>「ならば喜べ、ソロモン。貴様の願いを叶えてやる――――俺は、ブレイヴだ」

僅かの間動きを止めていたノインであったが、その耳に先程の乱入者……ブレイヴと名乗る者の声が届いた瞬間、直ぐに意識を切り替える。
彼は暫しの間、魔術師ソロモンへの弾劾の言葉を述べていたが、どうやらそれでも人間の味方である事は確からしい。
魔法金属の剣を顕現させ、ティンカー・ベルへの支援を行う姿からは、先ほど見せた狂乱の度合いは随分と薄れているように見える。
そして、暫しの後にブレイヴは戦闘をティンカー・ベルといとりに任せると、戦況を眺め見るノインへと言葉を投げかける。

>「ノインと言ったな。いや……ここは黒の王子、とでも呼んでおくべきか?」
「タルタロスの王党派に寝首を掻かれたいのであれば、好きに呼ぶが良い。権力の基盤が揺らいでる今であれば、喜んで刃を手に持つ事だろう」

だが、その言葉に対するノエルの返答は冷ややかなものであった。
ブレイヴがノインの出自に探りを入れている事を察し、僅かな糸口から正解を導き出す洞察力に感嘆を示したが、ただそれだけだ。
どうやら、ノインは己の出自を隠している訳ではなく面倒事を避ける為に口にしていないだけの様である。

と。そんな雑談の最中、地下道に甲高いナナシの絶叫が響いた。
不可視の何か――――ノインには視認できない、いとりが撃ちこんだ錫杖がナナシの関節部を深く抉り取ったのだ。
脚を内側へと巻き込み、一見して致命の傷を受けたかの様な姿と成る。が

>「気をつけよ!そやつは死んだフリをするぞ!」
「……」

ナナシは死んでいない。その事に少なくともソロモンとノインは気づいていた。
前者は魔術師としての知識と感性によって。そして後者は

「虫ケラよ。人の悪意は、息を殺しても逃れられぬと知るが良い」

悍ましい程の死を、死体を見続けてきた事に寄る経験則によって。
糸を吐き付け、石天井へと張り付かんとするナナシを前にして、ノインはただ腕を前に突き出した。
そして、渾然とした戦場に有ってあるにも関わらず良く聞こえる、凛とした声で言葉を紡ぐ。

『――――――命を捧げよ、黒き奴隷』

その直後、ノインが嵌めた指輪。その台座に嵌められた黒い宝石が昏い光を放つと同時に――――黒い炎が顕現した。
呪詛を煮詰めた様な、禍々しいという言葉では足りぬ程に悍ましい気配を纏う炎。
それは、ノインが視線を向けただけでその意を汲み、まるで忠実な家臣のようにナナシと、ナナシが吐き出した蜘蛛糸を飲み込み始める。
そう、炎上ではなく捕食だ。糸が、ナナシの体が燃えると同時に黒い炎へと姿を代えて行く。
ナナシは床を転がり、毒液を吐き、必死の抵抗を見せるが、炎は止まることなくナナシの全身を包みこみ……やがて、一欠片も残さずに蜘蛛のナナシはこの世界から姿を消した。
総量を増大させた黒炎は暫くの間何もない中空で燃え盛っていたが、やがてノインの指輪へと吸い込まれる様に戻って行った。

「……先を急ぐぞ。背後より先兵が来たのであれば、後詰めの者達は全滅したという事だ。ナナシは次々にやって来る。そう成る前に脱出し通路を埋めねばならん」

勇者の召喚時にソロモンの護衛に立っていた兵士や魔術師達。その死を淡々と告げると、何事も無かった様に一行に背を向け歩を進めるノイン。
だが、注視する余裕のある者は気付く事だろう。指輪を嵌めたノインの指が、ほんの僅かに痙攣している事に。

・・・・・・

56 :ノイン :2019/06/09(日) 00:51:46.52 ID:UMmQ9KTQ

>「危ない所だった……礼を言うぞ」

「礼は要らぬ。それよりも、疾くその虫ケラを駆除するがいい」
「ナナシは痛みに鈍感だ。それも虫型となれば尚の事……直ぐに反撃が来るであろう」

ノインの言葉の通り、蜘蛛型のナナシは既に反撃を試みんと動き出していた。
威嚇と同時に、毒液を吐き出す為に大きく口を開いている。けれど

>「――食らえ!」

奇襲の状況さえ覆えってしまえば、如何な蜘蛛の王の体を持つナナシとて勇者達には太刀打ち出来ない。
橘川鐘……その変貌した姿、ティンカー・ベル。
彼女がその異能を以って繰る、先程ノインが斬り落としたナナシ自身の脚が、大蜘蛛の口腔を深く抉り塞いだ。

(あの男、随分と戦況の判断が迅いな)

術に巻き込まれぬよう一歩後ろに下がり戦況を伺っていたノインは、
先の戦闘も含めた橘川という男の戦闘に対する『意識の切り替えの素早さ』に内心で感心する。

(確かあの男は、自身は超常者の住む隔離都市に住んでいたと言っていたな)
(……ふむ。魔術師で構成された【帝都13番地区】の様なものだと考えれば、愚鈍では生きていけぬという訳か)

この世界には存在しない国。
自身の故国の首都に存在していた流民街……所謂スラムを思い出しつつ、自身の知識の範囲内で納得をしたノインであったが、次に起きた出来事に彼にしては珍しく驚愕の色を示す事となる。

>「I know I have the body but of a weak and feeble girl……(あたしはか弱く脆い肉体の少女だ……)」
「――――っ!?」

驚愕の原因は、大饗いとり……勇者の少女の行動に寄る。
彼女が聞きなれぬ詠唱を行うと同時に、その身が黄金色の炎に包まれ――なんと、その姿が完全に消失したのである。
ノインはその出自により必要に迫られた結果、暗殺の類に対しての極めて強い知覚能力を獲得している。
そのノインをして気配を感じ取れない、知覚できない隠形は見事としか言えないが……ノインが驚愕したのはその現象自体についてではない。

「……悪魔(デモン)の契約者」

思わず言葉を漏らしてしまう失言を侵す程に驚愕したのは、いとりが引き起こした現象がノインにとって既知の物であったが故。
そう、このノインという青年は知っていた。『魔法少女』を知っていた。

55 :ソロモン :2019/06/01(土) 21:02:49.44 ID:T+zAP//S

ショウは再びベルへと姿を変え、斬り落とされた蜘蛛の足に金色の粉をふりかける。
>「――食らえ!」
そしてその足を蜘蛛のナナシの口に向けてぶち込んだ。
消化器官を通して、内臓にダメージが通る。
しかしすぐさまバリバリと音を立てて、蜘蛛の王は自分の足を食べてしまった。
その勢いはさながらシュレッダーのようである。
まともに噛みつかれたならば、ただではすまないだろう。

そしてソロモンがブレイヴに気をとられていた間に、イトリはその姿を大きく変えていた。
>「よーい、しょっと!」
ソロモンはイトリを、戦うには幼いと思っていたが、
その動きは間髪を入れない電光石火の動きで蜘蛛の王の背後をとってしまった。
錫杖を胴体の関節部に叩き込み、体液が飛び散る。
そう、ソロモンにはそのイトリの姿が見えていた。
魔力の種類は違えど、ソロモンには隠されたものを見る目があるからである。
しかし、そのソロモンの目でもイトリがここまで戦えることは見抜けなかった。
(また反省する材料が増えたな)
そうソロモンは思った。

蜘蛛の王は、ひときわ甲高い悲鳴をあげると、仰向けになって倒れた。
足が虫特有の痙攣を起こし、内側に折れる。
背中から流れ出る体液が床を濡らす。死んだのだろうか?
ソロモンが皆に叫んだ。
「気をつけよ!そやつは死んだフリをするぞ!」
そのソロモンの言葉を理解しているかのように、突如蜘蛛の王は息を吹き返し、
急速に後ろに下がりながら粘着質な糸を噴出した。
続けて、足が一本足りないにもかかわらず器用に天井に貼り付き、
こちら側の頭上から糸をふりそそいでいく。

58 :ノイン :2019/06/09(日) 00:54:15.96 ID:UMmQ9KTQ

地下道の出口を潜ると、眩い程の太陽が一行の目を晦ませ、吹き抜ける風が肌をなぞった。
周囲を見渡せば、広がるのは青々とした草原と――――そこに取り残される様に存在する、人が生きていた時代の名残。
とても頑強とは言えぬ木製の家と、古びた井戸。雑草だらけの麦畑。
そう、此処は廃村。
帝国と王国の戦争時に滅ぼされ、打ち捨てられた村の痕であった。
常であれば人の存在しないであろうこの場所であるが、現在この廃村には複数の人影があった。
その内5つは勇者とソロモンのものであり、残りは

「おお!良く戻られたソロモン殿!それで『今回の』勇者はそ奴らという訳かね!?いやぁ、3名も手に入るとは実に結構!これで我等人間の未来も明るいというものだ!なあ、皆の者!」

2mを越える巨躯に禿げ頭。海鳥の飛び姿の様な黒髭と、赤色を基本とし、金糸や宝石の誂えられた汚れ一つ無い華美な服を纏う男。
そして、その周りに立つ美術品の様に美しい金色の全身鎧を纏った30人の騎士達であった。
彼等は暫しの間、喜色と奇異が混じった視線を勇者達へ向けていたが、やがてソロモンにしきりに話しかけていた大男が、思い出したかの様に勇者達へと向き直り口を開いた。

「む、そう言えばまだ名乗っていなかったな。拝聴するが良い勇者共よ!」
「俺は栄光有るタルタロス王国軍輝煌騎士団長 ゾルヴェイン・サンダールス・ラス・ゲィタ・ヴ・サーペンシュタイン伯爵である!此度はソロモンの召喚する勇者の回収と監督の任で部下達と共にこの地にやってきた!ああ、平伏はせずとも良いぞ。俺は寛容なのだ!」

一息でそう言い切った男は、勇者達の表情や態度など歯牙にもかける様子も無く更に言葉を続ける。

「ソロモン殿から勇者が呼ばれた理由については聞いているんだろう?これより貴様ら勇者達は王国軍の下でナナシを殲滅する栄誉有る任務に就いて貰う!」
「ナナシを倒せば倒した分だけ褒章も与えてやろう!全滅させた暁には下級貴族の位を与える事も考えている!嬉しいであろう?励むが良いぞ!はっはっは!」

傲岸不遜と言うべきか。
勇者たちの回収に来たという貴族の男の言葉は一方的で、勇者達が自分達に従うのが当然とでも思っているかの様なものであった。

「よしっ!それでは早速王都へ向かい――――」
「待たれよ、ゾルヴェイン伯」

そして、そのまま配下の騎士達に命じ勇者達を馬車へ押し込もうとした貴族であったが、その言をノインが遮る。
一瞬不機嫌そうな様子を見せた貴族であったが、発言者がノインである事を認識すると、不承不承といった様子で聞く姿勢を見せる。

「ノイン殿。如何に異界の貴人とはいえ、我々の行動指針に意を挟むのは困りますなぁ」

「非礼は謝罪しよう。だが、事は伯の身の安全にも関わるが故、話だけでも耳に入れて欲しい」
「――先程、地下通路をナナシが追ってきた。直ぐに地下道を封鎖する作業を始めねば、此処が戦場となってしまう」
「如何な精強な伯の兵でも、相手がナナシの群れでは聊か手に余る筈だ」

淡々と語られたノインの言葉。
その言葉に対して不快そうな表情を隠さない貴族であったが、それでも状況判断をする教養は有しているらしい。

「……ふん!仕方ない。では今日は通路を埋める作業を行った後に近くの村で宿を取る事にしよう」
「おお、そうだ!勇者というのは便利な技術を持っているんだろう?ならば、地下道を埋める作業を手伝うのだ!」

貴族の男はそう言うと、勇者達に背を向け、華美な馬車へと向かおうとする。
あまりにもぶしつけな勇者を便利な道具としか見ていない言動。
それを前にして、勇者達は何を思い、どう行動するのであろうか――――

60 :橘川 鐘 :2019/06/10(月) 06:55:42.34 ID:PmM5AXtE

地下道を抜けると、廃村のような場所に出た。
私達を出迎えたのは、絵に描いたようなTHE☆偉そうな貴族のおっさんとその取り巻き達であった。

>「おお!良く戻られたソロモン殿!それで『今回の』勇者はそ奴らという訳かね!?いやぁ、3名も手に入るとは実に結構!これで我等人間の未来も明るいというものだ!なあ、皆の者!」

ん? なんか想像していたのと違うような……。

>「む、そう言えばまだ名乗っていなかったな。拝聴するが良い勇者共よ!」
>「俺は栄光有るタルタロス王国軍輝煌騎士団長 ゾルヴェイン・サンダールス・ラス・ゲィタ・ヴ・サーペンシュタイン伯爵である!此度はソロモンの召喚する勇者の回収と監督の任で部下達と共にこの地にやってきた!ああ、平伏はせずとも良いぞ。俺は寛容なのだ!」

「随分と長い名前だな……」

>「ソロモン殿から勇者が呼ばれた理由については聞いているんだろう?これより貴様ら勇者達は王国軍の下でナナシを殲滅する栄誉有る任務に就いて貰う!」
>「ナナシを倒せば倒した分だけ褒章も与えてやろう!全滅させた暁には下級貴族の位を与える事も考えている!嬉しいであろう?励むが良いぞ!はっはっは!」

「その……貴族の位よりも元の世界に返して欲しいんだが……」

次第に最初に感じた違和感の正体が明確になっていく。
な○う系小説とかによくあるこういう話では
どうか世界をお救いください! あなた達が最後の希望なのです!→世界救ったら元の世界に帰れるんだよね!?おk!
というのが王道だが、実際はそういうものでもないらしい。

>「よしっ!それでは早速王都へ向かい――――」
>「待たれよ、ゾルヴェイン伯」

有無を言わさず私達を馬車に押し込もうとする貴族を、ノインが止める。
私達に対するあまりの扱いに対して先輩勇者として物申してくれるのか?

>「ノイン殿。如何に異界の貴人とはいえ、我々の行動指針に意を挟むのは困りますなぁ」
>「非礼は謝罪しよう。だが、事は伯の身の安全にも関わるが故、話だけでも耳に入れて欲しい」
>「――先程、地下通路をナナシが追ってきた。直ぐに地下道を封鎖する作業を始めねば、此処が戦場となってしまう」
>「如何な精強な伯の兵でも、相手がナナシの群れでは聊か手に余る筈だ」

ノインが言ったのは、私が密かに期待したものとは違ったものの、確かに正論であった。

>「……ふん!仕方ない。では今日は通路を埋める作業を行った後に近くの村で宿を取る事にしよう」
>「おお、そうだ!勇者というのは便利な技術を持っているんだろう?ならば、地下道を埋める作業を手伝うのだ!」

通路を埋めるのは私の能力を使えば割と簡単だ。
その辺に転がっている瓦礫や岩を動かして塞いでしまえばいい。

62 :大饗いとり :2019/06/20(木) 04:54:07.06 ID:y/KsIWZq

魔法少女。
あたし達、悪魔と契約して戦う女の子たちにつけられた呼称(ネームタグ)だ。
彼女たちはその名の通り、魔法を使う事ができる。
それぞれの魔法少女の持つユニークな魔法は「固有魔法」なんて呼ばれていて、一人につき一つのオーダーメイドが基本だ。

「魔力を直接消し飛ばすエネルギー波を発射する」
「『飛行機』にまつわる物体を作り出す」
「とにかく身体能力をはね上げる」
などなど。魔法少女の数だけ魔法がある、と言っても過言ではない。

が、それとは別に、魔法少女なら誰でも使える一般的な魔法もある。
そのうちの一つが「魔装変身」……自身の纏う服装を、魔力をまとった特別なものに変換する魔法だ。
魔装は防御力が見た目より飛躍的に高く、趣味と実益を兼ねた魔法なのだけれど……一番の特徴は別にある。
「魔装変身状態の魔法少女は、魔法少女以外の者から認識されない」のだ。
冗談みたいなステルス性。魔法少女とそれ以外の者との間を遮断する、鉄壁の緞帳。
これのおかげで魔法少女たちの戦いは衆目の眼に触れず、お茶の間で日曜八時から放映されることもなかったのである。

さて。
この効果が本当に額面通り「魔法少女」でない者の知覚を遮断できるなら、あたしはこの世界でとてつもないアドバンテージを得ることができる。
が、文字通り「違う世界」でその額面がどこまで通用するか。それは試してみないと分からない。
という訳で、まずはお試しで変身してみたあたしなのだけれども。
錫杖を叩きつけた反動をバランスを取って逸らしながら見るに、

蜘蛛ナナシ→位置的に死角なので不明。
ノインさん→視線がずれてる。見えてないみたい。
ソロモンさん→めっちゃこっち見てる。
ティンカーベル→すごくこっち見てる。
白騎士の中の人→だいぶこっち見てる。

うわ……ステルス効かない人、多すぎ……?
まあ、冗談はともかく、お試しの結果は期待外れ予想通り、といったところだ。
さすがにそんなに都合よくできてないよね、世界。むしろノインさんには効いてるっぽいのが逆にびっくりではある。
重要なのが、「全員に見えてる」や「誰にも見えてない」ではなく、「見える人や見えない人が混じってる」のだ、という事。
これはつまり、「世界が変わったらステルス機能が無能になった」のではなく、
「ステルスは続いてるけど見える人が妙にいっぱいいる」のだという事だろう。
元々戦闘用のステルスではないし、完全無効でないだけまし、だと思っておこうか。

63 :大饗いとり :2019/06/20(木) 04:54:29.49 ID:y/KsIWZq

視線のチェックを一瞬で終え、あたしは蜘蛛ナナシの首の上から飛び降りる。
蜘蛛ナナシは甲高い悲鳴を上げると、引っくり返ってしまった。
やったか!?

>「気をつけよ!そやつは死んだフリをするぞ!」

フラグ即回収のお知らせありがとうソロモンさん! うれしくない!
ソロモンさんのセリフが聞こえたかのように、蜘蛛ナナシは即座に死んだフリをやめ、すばやく移動を始める。
あー、結構めんどくさいやつ。あたしの所持魔法(てもち)で何とかなるかなあ……。
と、のんきに構えていたあたしの背筋に、突如つららが叩きこまれた。

……もちろんそれはただの錯覚だ。
『我が名は魔女(コールドウィッチ)』が認識した「何か」が、感覚として咀嚼されるときにそのような形になっただけだ。
理屈ではそう分かっても、背筋を走る震えが止まることはない。

「なに……あれ」

答えは、直ぐに告げられた。

>『――――――命を捧げよ、黒き奴隷』

黒色の炎。
それが蜘蛛ナナシの体躯を飲み込んでいくのを、あたしは茫然と見守るしかなかった。
……あたしは知っている。あの黒い炎を、正確にはそれと同質の存在を、知っている。

「魔法少女の魔法……それも、こんなバカみたいな魔力量……」

魔力量、というのは、あたしたちの世界での魔力の値の数値化した指標だ。
生まれたての魔法少女で100。諸々の条件で数値は上昇し、6000を超えると「エルダー級」と呼ばれるようになる。
エルダー級は大抵でたらめな強さで、俗に「一人でラスボスになれるレベル」なんて言われたりもする。
そういうあたしも、実は前の世界では下っ端とはいえエルダー級だったりした。
が……。

「……安定しないけど、瞬間最大5桁って。冗談でしょ?」

目の前の黒い炎は、そんなあたしの鼻っ柱をたたき折るのに十分な力を有している。
そんな直感が、あたしのすべての感覚から十二分に伝わってきた。
……これは、魔法少女の魔法ではない。
あえて言語化するなら、それと同根でありながらより根幹にあるものだ。
すなわち。

「……悪魔」

蜘蛛と炎が消えたところを、あたしは穴が開くように見つめ続けていた。
……目をそらしたら、その炎に取って食われる。そんな心配を、真剣に思考していた。

64 :大饗いとり :2019/06/20(木) 04:55:00.24 ID:y/KsIWZq

* * *

「……なにあれ」

馬車に去っていくハゲ髭伯爵殿を見ながら、あたしは可能な限り極寒なイメージでセリフを吐いた。
先だって、あたしはソロモンさんを「あたしたちを完全に使い捨てるつもりはないだろう。今のこの人はそこまで非道には走れない」と評した事がある。
まさかフラグだったとは。ハゲ髭伯爵殿はまさに、その評で言う「あたしたちを完全に使い捨てるつもりの非道」だった。
おのれハゲ髭伯爵殿。ガタイがいいからチビハゲ髭伯爵殿とは呼べないのがちょっと悔しい。

「ソロモンさーん、配慮が足りませーん」

悔しいので、先生に言いつける生徒のようなポーズで愚痴ったりしてみた。

さて、どうしたものか。もちろん、魔法を使えば道をふさぐぐらいは簡単にできるのだけど。

「…………」

脳裏に黒い炎がよぎった。

>「おい、何をやっている!」「降ろせ! 降ろして! 降ろしてくださーいッ!」

……野太い叫び声に我に返ると、黄金鎧がいくつも空を飛んでいる。
ティンカーベルの仕業かな。意外と怒らせると怖いタイプだったのね……。
この調子なら、酪農家を恫か……道をふさぐのもやる気になってくれてると考えてよさそうだ。

さて、洞窟の封鎖はティンカーベルに任せるとして、あたしは何をしよう。
周囲を見回していると、青年とふと視線が合った。
白騎士の中の人だ。そういえば、きちんとした挨拶はしてなかったような気がする。

「やっほー。あたしの顔に何かついてるかな。
 かわいらしい目と口と鼻と眉毛とまつ毛以外は何もないと思うけど」

フランク?に挨拶をしてみる。

「自己紹介の時寝てたかもしれないからもう一回挨拶するね。あたしは大饗いとり。
 お兄さんのお名前も聞いていいかな。……何か、いろいろ大変そうだけど」

さきほど蜘蛛ナナシと戦っているとき、この人がソロモンさんに食って掛かっているのがちらりと見えた。
少しだけ聞こえたその時の内容からすると……。

「えっと。ありがと、あたし達のために怒ってくれて。
 ソロモンさん相手だとちょっと言いすぎてた気もするけど、
 あのハゲ髭伯爵殿みたいなの見た後だと、ちょっと沁みるよね。
 お近づきの印、ってわけでもないけど、これ貰ってもらえるかな」

あたしは手を数回握っては閉じすると、目を瞑って意識を少し集中し、魔法を発動させた。
『七日目の余技-トイクリエイト-』。魔法を込めた、誰でも使える道具を作れる魔法。
込めるのは共通魔法『思念通話』。
手を開けば、そこには銀色に鈍く輝く無骨なピンバッジが4つ。

「これを持ってる人同士の間で、テレパシー……って通じるかな。心と心で会話できるようになる、魔法のバッジだよ。
 とりあえず、今回一緒に来た人たち向け。
 あ、勝手に思考が漏れたりはしないから安心してね」

今後の運命が一蓮托生になる4人……ソロモンさんを入れていいなら5人
内緒話ぐらいできるようになっておきたいからね。

65 :創る名無しに見る名無し:2019/06/21(金) 12:31:39.19 ID:t21SLn6j

ゲソ天とウンコしか見えない

66 :Interlude :2019/06/29(土) 18:25:36.42 ID:aEfONG6H

【ブレイヴセット・システム()】

大渓谷の乾いた風に流されて、絡み合うタンブルウィードが行く当ても無く転がされている。
切り立った岩壁の上に、主を失った魔導航行研究所”アルゴス・ラボ”は、静かに佇んでいた。

―――ネームレスは、自恣の無い天災とは違う。こいつらは、本能に従う獣の群れだ。

張り巡らされた魔術障壁に対して、執拗なまでの攻撃を加えていたネームレスの群れだったが、
決壊と同時に施設内部から三つの人影が飛び出すのを契機に、破壊行為を一斉に中断した。
今は建物に興味を失ったかの様に、それらを追っている。正に狩猟の為だけの破壊だった。

《やはり、奴等の行動原理は単純な様だな……私達の周囲から離れていろ、コウヤ》

青き魔導騎士が 周囲のネームレスを一瞬にして氷結させ、それらを打ち砕く。

《すごい……すごいじゃないか! これが異界の魔導粒子の力なんだね!
 堅牢な装甲なのに、むしろ身体が軽く感じる。この力さえあれば……!》

赤き魔導騎士は、広刃の双身槍と獄炎の鬣を振り乱し、風車の如く刃を振るう。

《分かっていると思うが、一度の戦闘で消費可能なラグナロク粒子の量は限られている。
 無駄遣いするな。人間と同等のサイズである私達のブレイヴがオリジナルの戦闘力に迫り、
 武神の如き力を発揮する為には、ラグナ粒子をオリジナル以上に使いこなす必要があるのだ》

《見くびらないでよ父さん。僕は研究だけじゃなく実戦でも魔力を扱って来たんだ。
 これまでだって対費用効果の計算くらいして来たさ……兄さんと違ってね。
 それに、システムが力の扱い方を教えてくれる。だから――》

ブレイヴ・インフェルノは両肘を腰に引き、仰け反る姿勢を取った。
胸部装甲が硬い音を立ててスライドし、露出したレンズが発光する。

《ラグナ・ブラスタァァッ!!》

薙ぎ払う様にして照射された大質量の魔導粒子が、射線上のネームレス十数体を蒸発させる。
それは貫通して尚、撫でるが如く岩盤を抉り地層を表出させ、崩壊の余波で大地は溶融した。

《――使い所は心得てるつもりさ。これで敵の残りは半分以下って所かな》

《無理をするなイザヤ。記録では多数のネームレスが時間差で襲来したケースもあった。
 その様な事態に陥った時、万が一にもブレイヴが奴らの侵蝕を受けるわけにはいかん》

《心配性が過ぎるよ。いくら増えたって同じさ。だってほら、この異界の力さえあれば――
 ――こんなに! ――こんなに! ――こんなに簡単に! こいつらを倒せるんだからさぁ!》

新たに切り刻まれた数体のネームレスの切断面から紅いマナが噴出し、それさえも霧散する。
蓄積されたラグナロク粒子の大半を瞬時に放出したインフェルノは、明らかに消耗していた。

《今回のネームレス襲撃は、導師にも報告する必要がある……コウヤ、お前は援護要請に飛べ。
 瘴気の森を越えた先にある廃城の地下だ。そこでは魔法儀式による勇者召喚が行われている》

67 :Interlude :2019/06/30(日) 11:13:56.24 ID:8q6VndJn

【ブレイヴセット・システム()】

―――あの瘴気の森を越える……? 出来るのか、俺に。

《イザヤ、ネームレスの群れを出来る限り私達の側に引き付ける。
 不安定なコウヤのブレイヴが被弾すれば、どうなるか分からん》

《…ッ! 兄さんの事となると心配性を通り越して過保護なんだね、父さんは……昔からそうさ》

湧き上がる赤黒い炎の渦が、背後のネームレスへと執拗に纏わり付き、緩慢な速度で焼き尽くす。

《……早く行きなよ兄さん。
 もっとも、他の勇者を増援に連れて来る頃には――
 ――僕達だけで、ネームレスを全滅させちゃった後かもしれないけどね》

《空を行け。そうすれば瘴気の森の樹海迷路はおろか、魔獣すら障害にはならん》

そのネームレスを蒼い凍霧が包み、まるで介錯するかの様に氷の棺へと閉じ込め、砕け散らせた。

一瞬、俯いた様に思えた親父の表情が、今は分からない。
その視線の先を……何故、これまで俺は知ろうともしなかったのだろう。
昏い炎を照り返すバイザーが――コキュートスの仮面が――青騎士の真意を覆い隠している。

《この研究所の役割は終わったが、私達の戦いは、これから始まる。
 この場を切り抜けた後は――――家に、帰ろう。今後は向こうに拠点を移す。
 今日という日の祝杯の為に取って置いたボトルも、我が家のセラーにあるのだからな》

《祝杯とは気が早いね……とも言えないか。三人のブレイヴが揃えば勝ったも同然さ》

《戦勝祝いではない、誕生祝いだよ。あれは、お前達が生まれた年のワインだ》

《そうか……二十歳の誕生日、だね。僕と兄さんの。すっかり忘れていたよ。
 だけど何の意味が有るんだい? 母さんの料理を食べられない誕生日なんて!
 ミリヤが弾いてくれるピアノもだ! それもこれも全部……全部こいつらのせいで!!》

双身槍を二つに分割したインフェルノは、焦熱を宿した凶刃を左右の腕で振るう。
赫怒の魔人が乱れ舞い、乱れ突き、乱れ斬る毎に、紅色の蓮花が無残に散った。

《思えば、奴等が現れてから、ゆっくりと食事を楽しむ事も出来なかった。
 私は、父親失格なのかもしれん。お前達とは、もっと……もっと―――》

―――親父、俺は……。

《行け、コウヤ。いや……ブレイヴ・シュヴァリアー》

今になって俺は分かった。やっと思い出した。親父が仮面の下で、どんな表情をしているのか。
見えなくても、俺は知っている。子供の頃から何度も俺達を勇気づけてくれた、あの眼差しを。

―――ああ……必ず、辿り着いて見せる。

迷う事など、無かった。白き悪魔の飛び交う空の先を目指して、灰色の騎士は飛翔する。
その先に待ち受ける運命が、何れの願いを叶え、何れの祈りを棄却するのかも知らずに。

68 :ブレイヴ :2019/06/30(日) 11:22:29.82 ID:8q6VndJn

【コール・ブレイヴ()】

『ブレイヴ…!お主はもしや、こちら側の人間なのか……!?』

「……俺は、ネームレスの敵だ。それ以外の全てに意味は無い」

奴等を一体残らず駆逐する。他に為す者が居なければ、俺がやる。
障害となる者が現れた場合には、同様に排除する事になるだろう。

『タルタロスの王党派に寝首を掻かれたいのであれば、好きに呼ぶが良い』

「ならば、お前を今後は”のいのい”と呼ぶコトに――」

『――権力の基盤が揺らいでる今であれば、喜んで刃を手に持つ事だろう』

「どうせなら、人類同士の下らない争いを終わらせてみるか、ノイン?
 交錯する刃の数が増せば、その内の一振りが俺の首に届く可能性も下がる。
 声明文は、こうだ。”勇者の力を持つ王子を共和派の旗印に戴き、我々は決起した”」

『気をつけよ!そやつは死んだフリをするぞ!』

俺は思った。この爺さん、そんな目で俺を見てやがったのか。

『虫ケラよ。人の悪意は、息を殺しても逃れられぬと知るが良い』

俺は思った。この腹黒王子、そんな目で俺を見てやがったのか。

『……悪魔』

どちらも違った。どうやらノインは厄介なカードに魅入られているらしい。
天井に逆さになった蜘蛛の王を[皇帝]の逆位置だと解釈すれば、
―――暗示するのは、”コントロールの欠如”と言った所か。
[悪魔]の正位置は、”束縛”あるいは”負の連鎖”だ。

『……先を急ぐぞ。背後より先兵が来たのであれば、後詰めの者達は全滅したという事だ。
 ナナシは次々にやって来る。そう成る前に脱出し通路を埋めねばならん』

改めて周囲を観察する。王族専用の脱出通路と言った風情だ。
用途を考えれば出口は遠そうだ。そうでなければ意味が無い。

「お前達は先を急げ。俺は逆行して可能な限り追撃を食い止める。
 適当なタイミングで空から合流しよう。戦況を心配する必要は無い。
 ベル、俺が死ねば剣も消える……それが合図になる。ソロモンを頼む」

返事を聞かずに、俺は地下室へと向かう。
消耗を抑えて安全に移動する時間が、今は一秒でも惜しい筈だ。
邪推を排せば、それはイトリ曰く”バカみたいな魔力量”を行使したノインにも該当する。

69 :Interlude :2019/06/30(日) 11:30:25.60 ID:8q6VndJn

【ツイン・ブラッド()】

灰色の獣が歩いている。

―――ひどく、喉が渇いていた。
腹が空いている。肉を喰いたい。

灰色の獣が立ち止った。

此処は、きっと食糧庫なのだろう。
食糧庫なのだから、周りにあるのは肉だと思う。
だからきっと、古びた木箱の中に仕舞われているのは、肉だ。

灰色の獣が回廊を歩く。

転がっているのは肉だ。起き上がって来たのも肉だ。
鎧の中に仕舞われているのは肉だ。剣を構えた肉を引き裂く。
ローブの中に仕舞われているのも肉だ。杖を握った肉を千切り飛ばす。

灰色の獣は階段を上る。

踊り場の壁に、何かに手を差し伸べている聖女の肖像を見つける。
描かれている何かが気になって、何かの前に立ち塞がっている肉を薙ぎ払う。
描かれていた筈の何かは、別の紅い何かに塗り潰されて、本当に何か判らなくなった。

灰色の獣は思い出した。

そう言えば、自分は獣だった。獣は芸術鑑賞などしない。
気が付くと、色褪せた灰色の毛皮は全て剥れ落ちていた。

ただの獣は階段を上る。

甘く蕩ける様な、仄かな血の香から逃げる様に。
上って、上って、上って。
水の昏さに怯える深海魚が、陽光を求める様に。
上って、上って、上って。
石壁で四角く切り取られた、青い空に向かって。
上って、上って、上って。
やがて獣は、辿り着いた真昼のバルコニーに吹く風の中で――――

『……ここに居たんだね、兄さん』

――――自分と同じ姿をした獣と出会う。

70 :ブレイヴ :2019/06/30(日) 11:43:14.18 ID:8q6VndJn

【コール・ブレイヴ()】

日当たりの良い場所を選んで腰を下ろし、廃城の食糧庫から失敬したジャーキーを齧る。
俺は喧騒から距離を置いて、ソレを眺めた。命綱の存在しない黄金色の空中サーカスだ。

『おい、何をやっている!』『降ろせ! 降ろして! 降ろしてくださーいッ!』

勇者の記憶が俺の脳裏に過ぎらせたのは、異界のエレクトリカルパレードの情景だ。
ベルの機嫌次第では全員が二階級特進か。英霊来たりたるパレードを国費で開催だ。

―――”そろそろ、アレを止めてやれ”。この場で最も暇そうな奴に、俺は目線を送った。

『やっほー。あたしの顔に何かついてるかな』

こちらの意図が、魔法少女には伝わらない様だ。
ツイてないのは、黄金鎧の英霊候補生達だった。

「先程の蜘蛛の体液が若干、こびり付いている様に見えるが。
 お前の中で、その事実は存在しないコトになっているのか?」

『かわいらしい目と口と鼻と眉毛とまつ毛以外は何もないと思うけど』

「その申告リストと照らし合わせると、目と口と鼻と眉毛とまつ毛は揃っている。
 ――――ああ、どうやら”かわいらしい”が見当たらない様だ。付け直して来い」

『おっと、これは済まない……! 能力のコントロールを間違えてしまった!』

ベルの方には、言葉にせずとも伝わった様だった。
そうでなければ、アレが妖精美少女式の交渉術か。

『自己紹介の時寝てたかもしれないからもう一回挨拶するね。あたしは大饗いとり』

「それは、俺がソロモンと話していた時、お前は寝ていたという懺悔か。
 ……俺はブレイヴだ。言っておくが、それ以上の事を語る心算は無い」

『お兄さんのお名前も聞いていいかな』

「二秒前の言葉も聞いちゃいないお前がか?」

『……何か、いろいろ大変そうだけど』

「俺の”かわいらしいお名前”なら、ネームレスに喰われたよ。
 ネームレスに喰われた者は、ネームレスになるのが道理だ」

俺はジャーキーを半分に喰い千切り、奥歯で噛み締めた。
磨り潰す様に、幾ら噛んでも……味のしないジャーキーだ。

71 :ブレイヴ :2019/06/30(日) 11:51:25.33 ID:8q6VndJn

【コール・ブレイヴ()】

『えっと。ありがと、あたし達のために怒ってくれて』

「勘違いするな……とでも俺に言わせたいのか。
 事実を述べる時に、余計な気遣いなど無用だ」

『ソロモンさん相手だとちょっと言いすぎてた気もするけど――』

「――俺は、他ならないソロモンが相手だから言った。
 この歪んだ世界に、あの爺さんを責める資格を持つ者など、誰も居ない。
 ただ一人、爺さん自身の他には。放っておけばアレは死ぬまで自分を責め続けるだけだ」

『あのハゲ髭伯爵殿みたいなの見た後だと、ちょっと沁みるよね』

「……その平たい胸に手を当てて、考えてみろ。
 何が、何故、そして今、お前の中の”何処に”沁みているのかを。
 その場所の疼きが人間を使命に駆り立てる―――おそらくは、奴も被害者の一人だ」

『お近づきの印、ってわけでもないけど、これ貰ってもらえるかな』

「構わないが、二つ条件がある。先ず、最初に俺に渡すのを止してくれ。
 ”四つ”のものから一つ選ぶってのは、縁起が悪いんだ。それと―――」

差し出された記章を受け取らずに立ち上がり、少女を見下ろした。
その”かわいらしい”唇に人差し指を当てて、反論を封じる。
先程まで血塗れだった指先だが、今は綺麗なモノだ。
指だけでは無い。全身の傷が癒えていた。

「―――”兄さん”は、やめてくれ」

複数の自己再生能力が増幅されている。
ARL-X100の”L”は労働力のLだが、”R”は修復を意味するらしい。
異界の勇者とネームレスに”お近づき”になる度、俺は代償を支払わなければならなかった。

「イトリ……俺に向かって二度と、その呼び名を口にするな」

俺は、無防備に目蓋を閉じている少女の隣を静かに歩き過ぎる。
向かう先は馬車だ。無駄に広い座席の寝心地は悪くなさそうだ。

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